著者
堀川 知廣 川島 和夫 栗田 和彦 竹野 恒之 成川 吉男
出版者
茶研報
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.57, pp.18-25, 1983

P.longiseta SPEG. によるチャ輪斑病防除薬剤のうち,クロロタロニル剤,カプタホル剤,チオファネートメチル剤について,浸透性を付加させるとされている展着剤アトロックスBI,トクエース,ラビサンスプレーを加用した場合の効果について調査した。<BR>クロロタロニル剤800倍液は単用で散布した場合,摘採数時間後以内に処理しなければ効果がないとされていたが,アトロックスBIを500~1000倍で加用すると,摘採1日後においても若干の防除効果が認められた。しかし,摘採1日後の防除効果は実用的にはやや不十分であり,アトロックスBIを加用した場合でも,摘採当日中の散布が必要であると考えられた。トクエース(1000倍),ラビサンスプレー(500倍)も同等の効果が認められた。<BR>カプタホル剤は,摘採1日後散布では防除効果は実用的にやや不十分とされていたが,アトロックスBIを500~1000倍で加用したところ,摘採1日後散布においても十分な効果が認められた。摘採2日後以降の散布では効果不十分であった。トクエース(1000倍),ラビサンスプレー(500倍)も同等の効果が認められた。<BR>チオファネートメチル剤2000倍液にアトロックスBIを500倍で加用し,摘採5日後散布の防除効果を調査したが,効果は認められなかった。<BR>クロロタロニル剤800倍,アトロックスBI500倍の組み合わせについて,散布後12日目に製茶した荒茶について,ガスクロマトグラフィーを用い茶抽出液と荒茶の両者について残留性を調べたところ,残留量はアトロックスBIの加用により減少した。このことは加用による濡れ性の向上に伴ない,初期付着量が減少したためと考えられ,残留性について問題はなかった。
著者
堀川 知廣
出版者
茶研報
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.65, pp.38-45, 1987
被引用文献数
1

Pestalotia longisetaの各種植物に対する病原性を明らかにする目的で,枝,茎から切り放した葉,および自然条件下で生育している葉に対し分生子懸濁液を有傷接種し,病斑形成の有無を調査した。前者の試験では39科80種(品種系統を含む)の植物に対し接種をした結果,11科19種の植物で病斑が形成され,かつ病斑上にP.longiseta分生子が形成された。この内,ヤポンノキ,ココヤシではすべての接種葉で病斑が形成され,イヌマキ,クロマツ,ヒノキ,クリ(5-6系統),ヒガンザクラ,オウトウ,ナシ(長十郎,新水),モチノキ,トウカエデ,タカオモミジ,カキ(富有,次郎)では接種葉の50%以上で病斑が形成された。イチゴ,ビワ,欧米系ブドウ(紅瑞宝),サザンカにおいても病斑形成が認められた。また,自然条件下で生育している葉を供試した試験では,イヌマキ,ヒガンザクラ,イチゴ,ヤポンノキ,タカオモミジ,カキ,およびチャ(やぶきた)で病斑が形成され,病斑上にP.longiseta分生子層が形成された。以上の結果からP.longisetaは多種の植物に病原性を示すことが明らかとなり,P.longisetaが茶園で突然発生し始めた原因の一つとして,チャ以外の植物からチャへの本菌の移行が考えられた。<BR>なお,一部植物の種の同定にあったては国立科学博物館筑波実験植物園育成研究室の松本定氏にご指導を仰いだ。厚くお礼を申し上げる。また,本報告文をまとめるにあたり,ご懇切なるご指導を賜った農林水産省茶業試験場病害研究室長成澤信吉博士に深甚なる謝意を表する。
著者
中野 敬之 大石 准
出版者
茶研報
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.77, pp.1-4, 1993
被引用文献数
1

秋整枝から翌春一番茶萌芽期前にかけて'おおいわ・せ,さやまかおり,やまかい,やぶきた,かなやみどり,おくひかり'における冬芽の芽長と幼葉数の推移を調査した。<BR>全ての品種において,芽長と幼葉数は秋整枝直後から増加したが,12月上旬頃には停止した。幼葉数の増加停止期は,芽長の停止期よりも早い傾向であった。<BR>翌年2月下旬以降の増加については,品種間差が認められた。即ち,芽長が増加したのは,'おおいわせ,やまかい,やぶきた'で,幼葉数が増加したのは,`やぶきた,かなやみどり,おくひかり'の中~晩生品種であった。また,この時期の芽長や幼葉数の増加量は,前年秋整枝直後から12月上旬までの増加量よりも少なかった。