著者
渡辺 謙仁
出版者
草の根文化研究会
雑誌
草の根文化の時代
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-53, 2015-03-31

本稿は、「ソーシャルメディア衛星開発プロジェクトSOMESAT」を対象としたフィールドワークに基づく、初音ミクと宇宙開発の「草の根な関係」についての論考である。文化人類学者の小田(2010 p.46)は次のように言う。「どのエスノグラフィーも、特定のエスノグラファーが、特定の時期の、特定のフィールドで調査をし、特定の読者層に対して書いていったものです。そこには常に誤解、誇張、歪曲の可能性がつきまといます」。また、社会学者の佐藤(2006 p.174)は次のように言う。「対象者のスポークスマンによるものとも思えるような民族史を発表するフィールドワーカーもいます」。本稿は、対象者にとっての「正史」ではない。著者から見た「唯一の正しい」対象像を提示するものでもない。むしろ、対象を取り巻く文脈や解釈の多様性を示したい。 本稿では、2章で一見無関係な「初音ミク」と「宇宙開発」、3章でこの2つが結び付いて生まれたSOMESATをそれぞれ概説する。4章では、SOMESATを取り巻く社会状況を見ていくことで、「初音ミク」と「宇宙開発」を結び付けた条件を探る。5章では、SOMESATへの多様な解釈や参加をもたらす、草の根的文脈の多様性と多重性を見る。6章では、初音ミクが有する宇宙へ飛翔するキャラクター的身体について論じる。7章では、まとめと本稿が今後の草の根文化の研究とデザインに貢献する点について述べる。