- 著者
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小黒 一正
- 出版者
- 財務総合政策研究所
- 雑誌
- フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
- 巻号頁・発行日
- vol.2006, no.6, pp.151-176, 2006-09
既に人口減少社会に突入しているが,高齢化率(全人口に対する65歳以上の高齢者の割合)は,引き続き上昇していくことが予測されている。このため,これまで老齢世代と現役世代の助け合いの精神の下で支えられてきた現行医療保険制度は,膨張する国民医療費の将来推計を前にして,その持続可能性に疑問が呈されているとともに,賦課方式である現行制度自体に内在している世代間格差の問題にも注目が高まっている。そこで,本稿では,各世代の保険料率や自己負担率等を安定化し,世代間格差の改善を図る観点から,既存研究である西村(1997)や鈴木(2000)等の「医療保険の積立方式化」の考え方を参考にしつつ,現行医療保険制度に,有限均衡方式タイプの世代間格差調整勘定を付加するモデル(=修正賦課方式)を構築しその実証分析を行うことで,その可能性を模索している。実証分析の結果,実際の制度設計においては高齢化率の予測など種々の留意点等があるものの,現行医療保険制度に世代間格差調整勘定を創設することによって,世代間格差が改善される可能性が高いことが示された。