著者
松井 誉敏
出版者
財団法人地球環境産業技術研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、種々のポリイミド膜のCO2/CH4およびCO2/N2混合ガス透過において、ブロッキング効果とそれを生じさせる要因となるナノ構造、特に未緩和体積の大きさとの関係を明らかにすることを目的としている。これらの結果をもとに、高いCO2選択性を示す膜選定のための指針を与えることが、この研究の主目的である。今年度は膜素材となる合成したポリイミド(合計9種類)の一部について、ガス透過性能測定および、17年度導入した高圧ガス収着測定装置を用いてCO2収着性能測定を行った。ヘキサフルオロイソプロピリデンテトラカルボン酸二無水物(6FDA)を酸成分に、テトラメチル-p-フェニレンジアミン(TeMPDA)、トリメチル-m-フェニレンジアミン(TrMPDA)あるいはp-フェニレンジアミン(PDA)をジアミン成分に用いたそれぞれのホモポリマー膜の気体透過性を異なる温度で測定した。その結果、6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDA膜についてはCO2の透過の活性化エネルギーが負となったことから、ブロッキング効果を示す膜であることが示唆された。一方で、6FDA-PDA膜は通常の高分子に見られる正の活性化エネルギーを示し、ブロッキング効果を示さないことが示唆された。また、CO2収着量測定結果から求めたガラス状態にある未緩和体積(C'H)は、6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDAで約55cc(STP)/cc(polymer)と、有機蒸気などによるブロッキング効果を示すとされている一部の置換アセチレン系高分子膜に近い値を示した。一方で6FDA-PDA膜では、通常のブロッキング効果を示さないガラス状高分子と同程度であった。これら6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDAとPDA系の共重合体、ブレンド膜において、CO2に対してブロッキング効果を示す構造の遷移領域が存在するものと考えられる。この遷移領域での膜の状態、CO2に対する収着・透過性能を解析することで、最も適した分子設計指針が得られるものと期待される。