著者
天海 丈久
出版者
青森県総合学校教育センター
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

日本版DN-CAS認知評価システム(DN-CAS)は,適用年齢が5歳から17歳までと幅広く,検査で測定できるプランニング,注意,同時処理,継次処理の4つの認知処理能力は,幼児児童生徒の「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の立案の際に重要な情報を提供する。本検査結果の分析と解釈は,現在喫緊の課題である発達障害を有する高校生の支援も含め,特別の教育的支援を必要とする幼児児童生徒を教育する学校現場にとって,大きな示唆をもたらすものであると考える。そこで本研究では,DN-CASの分析を学校現場が実施しやすくするためのツールとして,「学校向けDN-CAS用所見作成マニュアル」を開発した。1 DN-CAS認知評価システムの実施発達障害を有する幼児児童生徒について検査を実施し,データを得た。2 認知尺度のパターン化学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD),広汎性発達障害(ASD)について,PASSプロフィール,下位検査プロフィール,使用した方略の特徴についてパターン化を行った。なお,統計処理にあたっては,SPSS Statistics 19を使用した。プランニング,同時処理,注意,継次処理のプロフィールとして,LDは注意は高くならず,継次処理は低くならないこと,ADHDは「N字型」を示すこと,ASDは「逆N字型」を示すことが示唆された。また,下位検査のプロフィールとして,LDは「図形の推理」「関係の理解」「表出の制御」が,ADHDは「表出の制御」が,ASDは「発語の速さ/統語の理解」が相対的に低くなる傾向が示唆された。3「学校向けDN-CAS用所見作成マニュアル」の開発日本特殊教育学会第48回大会(長崎大学),日本LD学会第19回大会(愛知県立大学)でポスター発表を行うと同時に,情報収集を行った。また,第39回発達神経心理学研究懇話会(DN-CAS事例検討会)においても情報収集を行い,得られた知見を総合して,Microsot Excelにより「学校向けDN-CAS用所見作成マニュアル」を開発した。開発にあたっては,試作版を青森県総合学校教育センター特別支援教育課,日本版DN-CAS作成者で評価した。公開については,現在関係者間で検討中である。