著者
峯崎 正樹
出版者
館林市立第四中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1.研究の目的中学校1学年理科学習おいて、複数単元に「粒子概念」を導入したカリキュラム開発を行い、実践、評価すことを目的とした。2.研究の方法「大気圧」、「密度」、「水溶液」、「状態変化」などの単元に粒子概念を導入した学習プログラムをデザインする。その計画に沿った授業実践を行い、単元および粒子概念の理解を見るため、質問紙により事前、事後、遅延(学習後1,2ヶ月後)調査を行う。3.研究の成果「大気圧」において導入した粒子概念は、「空気は粒子からできていること」、「空気の粒子が動き回って衝突していること」の2つである。学習前には約7,8割の生徒が、気圧現象の要因を「真空が引く」など内部の力と考えていた。粒子概念の導入後には、8割の生徒が粒子概念を用いて正しく理解し、2ヶ月後も理解は定着していた。「大気圧」で、真空容器内でマシュマロが圧縮される課題、マグデブルグ半球が離れない課題、真空の注射器のピストンが戻る課題を設定することが、粒子概念の理解に効果的なことが明らかとなった。「水溶液」の学習では、粒子モデルの認識と溶質の質量保存の理解を検証した。事前調査から、現行の教科書の説明で粒子モデルを提示しても、正しく認識できない生徒が多いことが分かった。導入した粒子概念は、「最小の粒の大きさや質量」、「1粒でも物質の性質をもつこと」、「最小の粒はそれ以上小さくならないこと」である。粒子モデルの学習により、分子レベルで粒子の大きさや特徴を理解させ、その分子を粒子モデルで表現することを指導すると、モデルを正しく認識できた。さらに、溶質の質量保存の学習で、粒子モデルを使って考察させることで、溶質の質量保存の理解は高まり、定着も優れていた。実践的な本研究の結果から、「大気圧」での粒子概念導入に加え、「水溶液」で「粒子モデルの学習」の導入および溶質の質量保存でのモデル活用により、構造的な単元構成を図ることができた。実践校での都合上、「密度」、「状態変化」での検証はできなかったため、今後の課題とする。