著者
吉原 經太郎
出版者
(財)豊田理化学研究所
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

紫外線照射によって湿潤空気から水滴・氷粒が生成するという新規反応を世界で初めて見出した。新規な凝結核発生の機構を解明し、水分子の水滴への成長過程を明らかにすることを試みた。光源としては紫外レーザー(193nmもしくは248nm)または水銀灯(185nm)を用いた。結果。1)過飽和条件では100μm程度の大きな水滴が異なった温度で迅速に生成した。2)非過飽和条件では粒子の成長は不十分で0.1μm程度にとどまった。3)2)では生成する粒子密度は高く、数百万個/ccに上った。4)高効率粒子生成は、酸素の吸収係数が極めて小さい248nm(KrF紫外レーザー)でも見られた。5)高効率水滴生成は粒子成長の面では不都合で「オーバー・シーディング」となっている。6)光を2回照射することによって、最初にできた粒子径分布を大きく出来ることを見出した。この結果は光技術によって粒子制御が可能なことを意味している。7)極めて極端な高温乾燥条件(摂氏50度、相対湿度10%)でも本方法では多量の水滴(水エアロゾル)を作ることができた。8)気相反応のシミュレーションを改良して、水の直接光分解によるOHラジカルの反応への寄与の程度を明らかにした(185nm照射の場合)。9)粒子形成反応のシミュレーションを行った。10)Cavity-Ring-Downレーザー分光法による低温粒子生成を観測した(京大川崎昌博研との共同研究)。過酸化水素と水を導入して粒子が生成する、また、湿潤条件でオゾンの紫外線照射によって粒子が生成した。これらの結果は従来提案してきた反応機構(過酸化水素による核生成)と合致する。結論。光照射によって10μm以上の大きな水粒子の迅速生成は過飽和条件下で可能。非過飽和条件では光照射は多数の小さな水粒子を作るのに適す。水滴により地球反射率(アルベド)を上昇させて、太陽光の地表への到達を制限し、地球温暖化阻止に役立つ可能性を秘める。新規の可能性が生じた。