著者
天野 修一
出版者
Japan Association of College English Teachers Chubu Chapter
雑誌
JACET中部支部紀要 (ISSN:18815375)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.101-111, 2022 (Released:2023-04-03)
参考文献数
19

本論文は、第二言語の子音生成に対する教育的介入の効果を検証するうえでの単一事例研究デザインの利点を、事例とともに提示するものである。言語教育研究でよく用いられる群間比較デザインでは、通常、データの抽出は研究期間中に数回の実施である。このようなデザインには少なくとも二つの欠点が指摘できる。第一に、介入前と介入後の2点でデータを引き出すとすると、必然的にパフォーマンスの縦断的な記述が制限されてしまう。第二に、介入実施中のデータがないため、パフォーマンスの変化の過程が不明確となってしまう。本論文では、これらの欠点に対応したデータの収集と分析の一例として、1人の参加者から合計14回のデータを抽出した単一事例の実験データを紹介する。日本語を母語とする参加者に、4週間の介入期間中、週1回、英語の /r/ の発音を指導した。その結果、介入期に入った直後にパフォーマンスが大きく向上し、介入期終了の5週間後に、介入前と同様の傾向にまで低下することが明らかとなった。これは第二言語の子音生成に対する教育的介入の効果検証の過程全体を通じた学習者のパフォーマンスの縦断的な記述によって観察可能となったものであり、介入前、介入中、介入後のすべてのデータを詳細に検討することが可能な研究デザインの必要性を示すものである。