著者
岩波 洋造
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.892, pp.371-376, 1962
被引用文献数
2

マツバボタンの花の雄ずいの運動に関する研究の一部として, 花糸の内部構造について調査を行なった.<br>マツバボタンの花糸は, 周囲が厚い膜にかこまれているにもかかわらず, 全体がたいへん柔らかい感 じで, たとえば, ピスにはさんで切片を作ると, 花糸がつぶれてしまう. したがって, パラフィン法, 凍 結法によって切片を作り, その横断面, 縦断面を観察したところ, マツバボタンの花糸は, 表皮, 柔組織 および管東組織の3つの部分からなっていることがわかった.<br>表皮の細胞は縦に長く(10×30×100μ<sup>3</sup>), 外側の膜だけが大へん厚くなり, その一部が突起となってい た. 柔組織の細胞も縦長で, 表皮細胞よりはかなり小型であるが, その大きさは大小さまざまで, ここに は細胞間げきが多くみられた. このような柔組織中の細胞間げきは, とくに花糸の基部において多くみら れ, そのため, ときには個々の柔細胞が細胞間げきのなかに浮いている状態にちかいところもあった. 花 糸の中央部にある管束の部分には, 3~4本の道管と, これを囲んで多くの師管が存在していた.<br>マツバボタンと花の形や葉の形はたいへんちがうが, これと同属であるスベリヒユにおいても雄ずいの 運動がみられる (後報). このスベリヒユの花糸の内部構造は, 全体にマツバボタンのそれより小型である が, 細胞の並び方や細胞間げきがあることなど, ほぼマツバボタンと同様であった.<br>マツバボタンの花糸を水で封じ, これを凍結させ (炭酸ガスの噴出による) て切片を作ったとき, 組織 が凍っているときはパラフィン切片と同様のことが観察されたが, 氷が溶けるにしたがってその切片は強 く収縮した. この収縮の過程において, 表皮の大きな細胞は, 突起の部分から内側に折れ曲るようにして 収縮してきた. したがって, 花糸の表皮細胞は, 本来そのように曲る膜の性質をもっていて, 自然状態に おいては, これが吸収による内圧によって押し拡げられていると考えられる. 生体のまま切片を作ると, 花糸の横断切片はすべてつぶれた状態になることや, 花糸が厚い膜につつまれていながら全体としてはご く柔らかい感じがするのは, そのためであろう. この表皮細胞の膜のうちがわに曲る物理的な性質は, 雄 ずいの運動の機構にある程度関与していると想像される. (横浜市立大学生物学教室)
著者
櫻井 久一
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.649, pp.1-16, 1941

日本産さはごは (<i>Philomotis</i>), こたまごは (<i>Bartramidula</i>) 及ながみさはごは (<i>Fleischerayum</i>) 屬の研究<br>元來さはごけ屬ハ水陸兩棲ノ屬デ從ツテ環境ニ因ル變化ガ相當強イノト確實ナル附圖ガナカツタノデソノ分類ハ困難トサレテ居タ。然ルニ1936年ニKABIERSCHハ東亞産ノさはごけ屬ヲ研究シ日本産トシテ8-9種ヲ列擧シテ居ルガ吾國ノさはごけ屬ハカクノ如キ簡單ナモノデナク, 嘗テ余ガ手元ニアリシ百數十點ト岩崎二三君ノ所有品百數十點, 合計三百點以上ノ本屬植物ヲ研究セシ結果22種ト若干ノ變種アルコトヲ確認シタノデソノ結果ヲ發表スルコトニシタ。尚ホこたまごけ屬及ビながみさはごけ屬ハ昔ハさはごけ屬ニ入レタコトモアル程近縁ノ種類ナノデ一所ニ報告スルコトニシタ。<br>實ハ西洋梨型ナリ。一種ヲ産ス …… ながみさはごけ屬<br>實ハ球型ナリ …… イ) 蘚齒ヨク發育ス …… さはごけ屬<br>ロ) 蘚齒ノ發育不全ナルカ又ハ缺除ス。<br>本邦3種何レモ臺灣産ナリ …… こたまごけ屬さはごけ屬 <i>Philonotis</i><br>(イ) <i>Philonotula</i> (1) <i>Socia</i> 節 <i>socia</i> こさはごけ<br><i>palustris</i> をほぬまたまごけ<br><i>lancifolia</i> ながばさはごけ<br>● <i>sctschwanica</i> をにさはごげ<br>● <i>plumualosa</i> やくしまさはごけ<br>○ <i>radicalis</i> しまさはごけ<br>○ <i>tenuissima</i> ほそさはごけ<br>△ <i>lutco-tapes</i> こがねさはごけ<br>(2) <i>Glomeratae</i> 節 <i>Uii</i> ばそばさはごけ<br>△ <i>Iwasakii</i> きぬいとさはごけ<br>○ <i>laxirctis</i> まるばさはごけ<br><i>laxissima</i> たいわんさはごけ<br>(3) <i>Revolutae</i> 節 ● <i>revoluta</i> まきばさはごけ<br>● <i>sccunda</i> ひめまきさはごけ<br>(ロ) <i>Euphilonotis</i> (1) <i>Falcatae</i> 節 <i>falcata</i> かまばさけごけ<br><i>japonica</i> はいいろさはごげ<br>○ <i>Truneriana</i> おほさけごけ<br>● <i>seriata</i> ねぢればさはごけ<br>(2) <i>Fontanae</i> 節 <i>fontana</i> さはごけ<br>● <i>lutea</i> にいたかさはごけ<br><i>yezoana</i> えぞさはごけ<br>○ <i>marchica</i> ひめさはごけ<br>● 印日本新品<br>△ 新種<br>○ 從來産地不確實ナリシモノ
著者
T. Nakai
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.504, pp.556-566, 1928 (Released:2011-01-26)
被引用文献数
2
著者
今井 三子
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.659, pp.514-520, 1941

本報告ハ第二報ノ續デアル。<br>391. こにせいっぽんしめぢ <i>Entoloma turbidum</i> (FR.) QUÉL. 淺川御料林内デ採ル。<br>392. ひめあじろもどき <i>Pholiota marginella</i> PECK. 高尾山中デ採ル。<br>393. つばふうせんたけ <i>Cortinarius armillatus</i> FR. 山梨縣ノ針葉樹林及混淆林ニハ廣ク分布スルラシイ。<br>394. むらさきたけ <i>Cortinarius subtabularis</i> KAUFFM. 北米種デ山梨縣下ニテ採ル。<br>395. おちばとまやたけ <i>Inocybe floccosa</i> (BERK.) SACC.<br>396. ささくれとまやたけ <i>Inocybe Hysterix</i> (FR.) KARST.<br>397. ゆきとまやたけ <i>Inocybe subvatricosa</i> IMAI. 全體純白色デ, 剛毛體ヲ缺如シ, 胞子ガ類卵形, 平滑ナ種類デアル。高尾山デ採ル。<br>398. あせたけもどけ <i>Inocybe umbrina</i> BRES.<br>399. くりいろむくえたけ <i>Naucoria cucumis</i> (PERS. ex FR.) GILL.<br>400. しろえのくぎたけ <i>Gomphidius glutinosus</i> [SCHAEFF.] FR.<br>401. あふぎたけ <i>Gomphidius roseus</i> (FR.) GILL. ハ新知種デハナイガ著者ノ都合上載録シタ。<br>402. ぬめりあかちちたけ <i>Lactarius hysginus</i> FR. ハ赤褐色粘性ノ菌傘ヲ持チ, 白色ノ辛味アル乳液ヲ漏出スル。<br>403. むらさききからはつ <i>Lactarius speciosus</i> (BURL.) SACC. ハきからはつニ似ルガ白色ノ乳液ガ後チニ紫色ニ變ツテ來ル。<br>404. うすくれないたけ <i>Russula rubra</i> (KROMBH.) BRES. ハ赤色ノ菌傘ト淡黄色ノ菌褶ヲ持ツタ菌デ肉ハ辛イ。べにたけニ似ルガベにたけノ菌褶ハ白色デアル。<br>405. ふじうすたけ <i>Cantharellus Fujisanensis</i> IMAI ハうすたけニ近似スルガ, 菌傘ノ肉ハ厚ク, 菌柄ハ殆ド赤色味ヲ帶ビナイシ, 胞子ガ有刺ナ點デ區別出來ル。