著者
平田 乃美 フィッシャー ダレル L.
出版者
The Japanese Society of Environmental Psychology
雑誌
環境心理学研究 (ISSN:21891427)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-37, 2013 (Released:2017-01-31)
参考文献数
46

環境心理学領域の教育環境研究は,認知学派と生態学派に大別できる。どちらの起源もLewinの人間行動の定理B=f (P, E)に遡る。認知学派の初期,Murrayの「要求−圧力モデル」は,人間と環境の符合関係の基本的枠組を推進して人間−環境適合の概念に多大な貢献をした。SternやHuntはこれを引き継ぎ,「人間−環境適合理論」を展開した。認知学派の教育環境研究は,子どもたちの現実と選好する学級環境の一致(人間−環境適合)による教育効果の向上を報告している。生態学派の初期,Barker と Wright は,行動にかかわる場の特異性の発見から「行動セッティング」を提唱した。生態学派の教育環境研究は,行動パタンと物理的場面の形態の一致,類似性を意味する「シノモルフィ」によって教育効果の向上がもたらされることを報告している。最後に,環境心理学における教育環境研究の再活性化にむけて,ICT(情報通信技術 Information and Communication Technology)を備えた教育環境の測定指標,学習者の個人差,相互作用論から相互浸透論への移行,について今後の研究を展望した。