著者
吉川 仁
出版者
The Kansai Law and Politics Association
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.119-134, 2002-03-23 (Released:2018-01-10)

1997年3月27日に札幌地方裁判所は, いわゆる「二風谷ダム事件判決」を下した。本稿はこの判決の要旨といくつかのコメントを英文で書いたものである。事件の概要そのものとそれに対するコメントは既にいくつか著されたものがある。ただ, 本稿は, 裁判所として, というより, むしろわが国の国家機関としては初めてアイヌ民族を先住民族として認めた点は他の多くの論評同様評価しつつも, 従来指摘されてこなかった次の3点についてコメントしている。第一は, 札幌地方裁判所が, 国際人権規約B規約27条が少数民族の固有の文化を享有する権利を保障しており, それゆえ, アイヌ民族に対してもそうであるとしつつ, 憲法98条2項を媒介として, 憲法13条においてアイヌ民族固有の文化享有権が保障されていると解釈した点について, そのような権利は13条だけでは導きだし難いのであって, 法の下の平等を定めた憲法14条とのかかわりを考慮する必要があるのではないかという点である。第二は, 主権の変遷と土地権の存在・消滅の関係及びそれとも関わる財産権の性質について再検討する必要があるのではないかという点である。
著者
ヴァンオーヴェルベーク デミトリ
出版者
The Kansai Law and Politics Association
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-54, 2002-03-23 (Released:2018-01-10)

ベルギー国憲法は1831年2月7日に施行された。立法者は君主を想定しながらも, 君主の政治的介入を前例がない程制限していた。しかし, 歴史的な状況とレオポルド一世の性格により, 立法者の想定よりも君主の政治的介入は強かったと思われる。第二次世界大戦後には君主のフォーマルな政治介入は終了したものの1950年に即位したボードワン国王によりインフォーマルな政治介入が強化された。ベルギー国憲法の実態と運用にずれが生じたことを論じることがこの論文の目的である。