著者
ガルマーエヴァ オリガ
出版者
The Society for Teaching Japanese as a Foreign Language
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.31-46, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
39

本研究では,日本語の動詞の過去形を取り上げ,その理解と産出に関して理解中心の処理指導と産出中心の指導がそれぞれどのような効果をもたらすのか検証した。過去形の丁寧体の語尾「~ました」を単純な形式,普通体の語尾「~た・~だ」を複雑な形式とし,両形式の処理指導および産出指導の効果を比較するために,ロシア語を母語とする初級日本語学習者を対象として11名に処理指導を,8名に産出指導を行った。理解と産出に関して事前・直後・2週間後にテストを実施し,その得点を分析した結果,丁寧体の語尾の理解と産出においては処理指導の効果が高かった。一方,普通体の語尾の産出においては産出指導の方がより効果的であった。つまり,処理指導は単純な形式の習得を促すことができるが,複雑な形式の場合は産出を促す指導が必要になると考えられる。