著者
森 敏生 甲斐 昌一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J85-D2, no.6, pp.1093-1100, 2002-06-01

本論文では人の脳の確率共鳴現象の存在を,脳波の雑音効果から研究した.ここでは α 波周波数(fα)に見られる引込み現象を利用し,α 波に近い周期刺激では引込み現象が被験者の感情や体調などの影響を受けやすいので,その影響の少ない倍周期引込みを対象とした.実験は,中枢神経系・脳内部で確率共鳴現象が起こることを明確に示すために,周期光刺激を右眼に雑音光を左眼に印加した.この際,右眼の弱い光刺激のみでは α 波の引込みを起こさない.この状態で左眼の雑音光強度を可変にすると,ある適度な強度で脳波は引込みを起こし,スペクトル中に刺激周波数(fs)の倍周波に鋭いピークが観測される.更に強い雑音を加えるとこの鋭いピークは消え,引込みからはずれることが観測された.各雑音光強度に対してこのスペクトル振幅をプロットすると確率共鳴現象で見られるベル型の変化を示した.この研究では周期及び雑音刺激が各々独立した入力点(左右眼)に印加されていることから,確率共鳴現象が視交差以降の視覚経路すなわち中枢神経系で起こっていると結論される.

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