- 著者
-
橋本 新一郎
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09135713)
- 巻号頁・発行日
- vol.J56-D, no.11, pp.654-661, 1973-11-25
日本語単語アクセントの言語学的,音響学的,聴覚的諸性質について,統一的に論じた.まず,単語アクセントの種類が,日本語東京方言では,せいぜい十数種であり,0形から5形までで,全単語の98%以上をしめること,また3形以上で,nモーラ長の単語を取り上げた場合,8形の例外を除けば,第(n-2)モーラにアクセント核が存在する確率が最も高いことを見い出した.つぎに,単語の各モーラについて,母音のエネルギー重心点で求めた基本周波数は,単語の種類によらず(同一アクセント形をもつ単語について),きわめて安定であり,単語アクセントの形を反映する音響パラメータとなることを示した.また,この基本周波数と振幅および音韻継続時間の三要素がアクセント感形成に,上記の順序で寄与していることを明らかにした.最後に,合成音声を用いて,種々なピッチパターンのアクセント感に及ぼす影響を調べた結果,単語の種類や被験者によらない,各アクセントの形に固有なピッチパターンが存在し,その聴覚的許容範囲は,一人の話者の発音によるピッチパターンのばらつきよりも一般に広いことが明らかとなった.