- 著者
-
小池 竜司
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.572-573, 1999-10-30
異常値の出るメカニズムと臨床的意義 いわゆる抗核抗体の抗原を検索する過程で,核成分抽出物の可溶性分画はENA(extractable nuclear antigen)と呼ばれた(→「抗ENA抗体」の項参照).そのうち,リボヌクレアーゼで処理すると患者血清との反応性が消失する抗原に反応する抗体(RNase感受性抗ENA抗体)のかなりの部分は,抗RNP抗体に相当する.RNP(ribonuclear protein)とは,mRNA,rRNA,tRNA以外に細胞内に大量に存在する低分子RNAと蛋白の複合体を指すが,そのうちのU1RNPという複合体を構成する蛋白(8サブユニット存在する)のうち3種類を抗原とする自己抗体が狭義の(一般的に用いる)抗RNP抗体に相当する.最近では定義を厳密にするために抗U1RNP抗体とも呼ばれる. 抗RNP抗体は混合性結合組織病(MCTD)の診断に必須とされているが,SLEをはじめとするその他の自己免疫疾患でも検出される.その存在はさほど特異的なものではないが,臨床像と照合するとある種の症候と相関していることを示唆する報告もいくつか存在し,興味深い点もある.