著者
小池 竜司 中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.89-98, 2009 (Released:2010-03-08)
参考文献数
7
被引用文献数
3

臨床医の視点から見た医薬品安全情報とは、副作用情報だけではなく、安全に薬物治療を行うためのすべての情報を指している。臨床医が必要とする医薬品安全性情報は、薬理学的データ、薬品名、投与される患者の病歴や症状、そして医療機関における電子的または紙ベースの処方箋発行システムも含むものである。多くの臨床医は一般的には医薬品安全性情報に興味があるが、数多く提供される副作用情報は、その中のごく一部が各自の診療や処方に必要な情報であるに過ぎないことから、それらを必ずしも注目していない。さらに、日常の診療に多忙な本邦の臨床医は、提供される情報から必要な情報を抽出し、管理し、利用し、さらに新たに副作用を報告する時間を確保することは困難である。 医薬品安全情報の中でも特に副作用情報に関しては、データの収集、データベースの管理、臨床医に対するフィードバックなどを含めた管理体制に多くの問題点が存在する。特に現在の副作用報告システムは、臨床医に依存しすぎている。本邦において医薬品安全性情報の検出感度と管理体制を改善するためには、臨床医だけではなく、薬剤師およびその他の医療従事者、そして患者によっても報告が行われる体制を整備していく必要があるだろう。さらに、すべての医療機関において医薬品安全性情報の専従組織を構築することが期待される。2009年に発足した消費者庁はそのような視点に立った組織であり、医薬品安全性情報に関して、このような役割を担う行政機関設立は一つの解決策となり得るであろう。また、医薬品安全性情報は医療の中で臓器横断的な情報であることから、専門分野に特化している医師だけでなく、総合的医学、総合診療に秀でる臨床医も医薬品安全性を扱う機関に必要な人材と言えよう。

1 0 0 0 抗RNP抗体

著者
小池 竜司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.572-573, 1999-10-30

異常値の出るメカニズムと臨床的意義 いわゆる抗核抗体の抗原を検索する過程で,核成分抽出物の可溶性分画はENA(extractable nuclear antigen)と呼ばれた(→「抗ENA抗体」の項参照).そのうち,リボヌクレアーゼで処理すると患者血清との反応性が消失する抗原に反応する抗体(RNase感受性抗ENA抗体)のかなりの部分は,抗RNP抗体に相当する.RNP(ribonuclear protein)とは,mRNA,rRNA,tRNA以外に細胞内に大量に存在する低分子RNAと蛋白の複合体を指すが,そのうちのU1RNPという複合体を構成する蛋白(8サブユニット存在する)のうち3種類を抗原とする自己抗体が狭義の(一般的に用いる)抗RNP抗体に相当する.最近では定義を厳密にするために抗U1RNP抗体とも呼ばれる. 抗RNP抗体は混合性結合組織病(MCTD)の診断に必須とされているが,SLEをはじめとするその他の自己免疫疾患でも検出される.その存在はさほど特異的なものではないが,臨床像と照合するとある種の症候と相関していることを示唆する報告もいくつか存在し,興味深い点もある.