著者
中山 和彦 小野 和哉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1023-1025, 2011-10-15

諸言 祈祷性精神症は,東京慈恵会医科大学初代主任教授森田正馬が,「余の所謂祈祷性精神症に就いて」(1915(大正4)年,「神経学雑誌」第3巻2号)によって世界で最初に報告した。その論文の中で,迷信,まじない,祈祷などに基づいて発症する心因性でありながら精神病性症状を呈する疾患群に対して名づけた呼称である1)。その論文では「祈祷性精神症」とされ,後に名称は祈祷性精神病と改められている。心因性である疾患に病は好ましくなく,さらに少なくとも,当時宗教的行為に際して生じる心身における症状を「病」と表現することはできなかったと思われる。 現在のわが国の精神医学の教科書にもあまり記載されなくなっている。操作的診断基準を基にした疾患分類が普及した結果,このような原因による呼称は過去のものとなったこと,また実際に,このような病態に我々が遭遇することがまれになってきたのも事実である。一方,現代では,経過中の病態の変化が激しく,症候のみの分類では疾患の本質がどこにあり,治療をどのように進めるべきか明確になりにくくなっている。その意味では,伝統的な疾患概念ではあるが,もう一度原因論に立ち戻って精神疾患を考える意義を伝えてくれているといえるかもしれない。

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