著者
中山 和彦 小野 和哉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1023-1025, 2011-10-15

諸言 祈祷性精神症は,東京慈恵会医科大学初代主任教授森田正馬が,「余の所謂祈祷性精神症に就いて」(1915(大正4)年,「神経学雑誌」第3巻2号)によって世界で最初に報告した。その論文の中で,迷信,まじない,祈祷などに基づいて発症する心因性でありながら精神病性症状を呈する疾患群に対して名づけた呼称である1)。その論文では「祈祷性精神症」とされ,後に名称は祈祷性精神病と改められている。心因性である疾患に病は好ましくなく,さらに少なくとも,当時宗教的行為に際して生じる心身における症状を「病」と表現することはできなかったと思われる。 現在のわが国の精神医学の教科書にもあまり記載されなくなっている。操作的診断基準を基にした疾患分類が普及した結果,このような原因による呼称は過去のものとなったこと,また実際に,このような病態に我々が遭遇することがまれになってきたのも事実である。一方,現代では,経過中の病態の変化が激しく,症候のみの分類では疾患の本質がどこにあり,治療をどのように進めるべきか明確になりにくくなっている。その意味では,伝統的な疾患概念ではあるが,もう一度原因論に立ち戻って精神疾患を考える意義を伝えてくれているといえるかもしれない。
著者
中村 晃士 鈴木 優一 山尾 あゆみ 加藤 英里 瀬戸 光 沖野 慎治 小野 和哉 中山 和彦
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.121-125, 2012-07-15 (Released:2017-01-26)

われわれは,家族内葛藤から生じたと思われる心因性難聴と診断された女児Aを経験した.16歳の女児Aの幼いころの家庭では,父親がアルコールによる病的酩酊があり,父親から母親に対する暴力が日常的にあった.患者自身は被害に遭うことはなかったが,母親が父親に暴力を振るわれる姿をいつも見ており,緊張した毎日を送っていたと思われる.こうした中,患者は小学校低学年から耳が聞こえにくいという症状を呈していたが,耳鼻科を受診するも耳鼻科の診断がなされるが精神科治療に結びつくことはなかった.患者が小学5年生のときに両親は離婚しているが,父親の仕事をAが手伝うといった形をとっていたため,家庭,そして両親のバランスをAがとるという調整役を担わされていた.その結果として,難聴は次第に悪化し,16歳まで遷延化したため,精神科治療に導入された.診察の結果,Aの難聴は心因性であるとされ治療が開始された.面接の中で,Aにとって難聴は,意思を表明しないための道具であり,防衛として理解された.すなわち,Aは両親の狭間で意見を求められたり,ときにはどちらにつくのかといった態度の表明を迫られたりし,それを出来ないAにとっての防衛策が難聴だったのである.Aは家庭内で調整役を担わされているために葛藤状況が生じていると考えられ,Aの思いを言語化するよう治療では促された.もちろん,防衛としての難聴をAが手放すには時間がかかるが,Aが家庭内での調整役を担わなくても家族が崩壊しないことを現実生活の中で体験していけば,少しずつ難聴を手放せていけると思われた.また現代社会の中で,家庭環境はより複雑化していく一方であり,このような患者が増えていくことが予想される.治療者は,家族内の病理が女性や子どもといった弱い立場の人の身体症状という形で表面化しやすいということを念頭に治療に当たらなければいけない.
著者
中山 和彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.217-228, 2014-03-01 (Released:2017-08-01)

キュブラー・ロスの示した「死に向かう人の心理過程」は,モーツァルトのレクイエムの曲構成そのものである.この心理反応は死に向かうときばかりでなく,ごく普通の臨床場面でも遭遇する.神経症者の葛藤,パーソナリティ障害や適応障害の症状形成,摂食障害の強迫性,現代型うつ病にみる他罰的反応,軽症化した統合失調症など,その視点で焼き直すと,5段階の心理反応のどこかのステージに位置していることがわかる.本稿では「女性の心身相関」において,この変化する心理反応がどのように心身の症状形成にかかわっているか検証した.特に急性精神病,なかでも女性に多い非定型精神病に焦点を当てた.そして「女性・性」のもつ周期性,それが機動力になっていると思われる,自己治癒力に注目した.隣接するカタトニアの世界から「分け隔てる力」を「女性・性」がもっている.症状形成を極性と周期性でみてとると,振動性と波動性に支配されている.「女性・性」はその波長を調整する力をもっているのではないかと考えた.
著者
中村 晃士 沖野 慎治 小野 和哉 中山 和彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1105-1110, 2014-12-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
3

不定愁訴に基づき身体科をいくつもかかる患者の中には,自閉症スペクトラム障害(ASD)と思われる一群がいる.こうしたASD患者の特徴をアスペルガー障害の男性症例を提示して考察した.まずASD患者は,基本的に身体過敏性をもち,さらにコミュニケーション障害を含む社会性の障害からくる不適応による症状の身体化,そしてそれを強固なものとする症状へのこだわりをもつ.筆者らはこれをASD患者の「身体化の三重構造」と呼ぶこととした.この「身体化の三重構造」のために,ASD患者の身体症状が遷延化しやすく,結果として身体科を不要に受診し続けやすい.こうした患者への対応では,患者と治療者の関係性を意識的,積極的に良好に保つこと,彼らの過敏性などの特性についての認識を共有すること,コミュニケーションの中であいまいな表現は極力避け,ときには断定的な表現を用いるなどの工夫が必要であることを指摘した.
著者
川上 正憲 中村 敬 中山 和彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.359-366, 2015

アトピー性皮膚炎に身体醜形障害を併存する1例を報告した.神経質性格を基盤にしたアトピー性皮膚炎の患者が,皮膚症状に対する「とらわれの精神病理構造」を認める場合,外来森田療法は有用である.治療者は,彼女の語り,および彼女の実存を主体的,実存的に我がものとして引き受け,「生の欲望」の涵養を行った(実存的交わり:ヤスパース).また,本症例は皮膚科医師に「顔の皮膚症状は良くなっている」と言われているにもかかわらず,「自分としては良くなっているとは思えない.納得できない」という「皮膚科医師の客観的判断と,本人の主観的判断の不一致」を認めた.こうした認知様式は,身体醜形障害に由来するもので「妄想的心性」もしくは「外見の欠陥に対するとらわれ」と呼ばれる.こうした認知様式が彼女のドクターショッピング行動を引き起こしていたことを指摘した.
著者
杉田 繁治 中山 和彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.99-104, 1982-02-20 (Released:2011-03-14)
参考文献数
5

国立民族学博物館における画像ファイルシステムのひとつとして, 新しく開発された映像音響情報自動送出装置ビデオテークに関し, その構成, 機能, 作動について, 主として利用者の立場からの解説を行った.