著者
堀 広子
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.713-719, 2000-07-15

【抄録】 長期間にわたり明瞭な自己像幻視が出現した精神分裂病の1例を経験した。長期間にわたる自己像幻視が出現した患者背景として,自己像幻視の易発現性にかかわる要素が多数存在することが考えられた。また,本症例は長期間にわたり分裂病症状が初期症状にとどまっており,二重身体験と精神分裂病における症状進展の抑止という臨床的意味において示唆に富む症例と考えられた。 精神分裂病(以下分裂病と略す)でみられる二重身体験は,古くから知られ,また豊富な精神病理学的意義を有するにもかかわらず詳細に記述された症例報告は少ない。今回,筆者は長期間にわたり明瞭な自己像幻視を呈した分裂病の1例を経験した。自己像幻視の易発現性にかかわる患者背景およびその臨床的意味に関して示唆に富む症例であったので,以下に自験例を提示し,若干の精神病理学的考察を加えここに報告する。

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