著者
岡田 靖雄
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.657-660, 1998-06-15

■島村俊一の狐憑病調査 憑きものに関心をもつものにとって,本誌の「シリーズ・日本各地の憑依現象」はありがたい。その第2回「山陰地方の狐憑き」3)は島村による現地調査にふれていないので,『東京医学会雑誌』の第6巻(1892年)から第7巻に8回にわたり連載された「島根県下狐憑病取調報告」8)の内容を紹介したい。 島村は1891年(明治24年)7月8日に出張を命じられて14日に東京を出発。尾道で1名の狐憑病患者をみ,23日松江着。出雲・石見・隠岐の3国をめぐり啓蒙講演もし,8月29日に松江をたって9月2日帰京。その間に人狐憑き29名(男9,女20),犬神憑き(外道憑き)2名(男女各1),狸憑き1名(男),野狐憑き2名(男)の計34名をみた。名称はちがっても同病なので狐憑きと概称すると島村はいう。診断は錯迷狂〔パラノイア〕4,躁狂4,ヒステリー狂およびヒステリー15,酒精中毒症3,続発痴狂1,老人痴狂1,マラリアおよびチフス3,関節炎1,肺癆1,卵巣のう腫1。狐憑きとされた状態像は,躁状8,錯迷5,熱性譫妄5,ヒステリー発作15,腫物1である。患者が狐憑きとみとめられたのは,責めをうけたのちに自白してが10名,他よりただちに狐憑きと目されたのが24名である。

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