- 著者
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佐藤 達夫
- 出版者
- 医学書院
- 雑誌
- 臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.11, pp.837-846, 1991-10-20
睾丸(精巣)のラテン語名testisの第1語義は「証人」witnessであり,「睾丸」は男性を証明するものという意味で派生した第2語義と想像される.使用頻度の高いtestify,testament,testという英単語もtestisと用じ語源をもつものらしい.睾丸のもつ重要性は"testis"に表わされていると見ていいだろうし,英語testisやフランス語tes-ticule,イタリア語testicolo,スペイン語testeに継承されているのも理解できるところである.それにくらべると,睾丸炎orchitisなどに使われるギリシャ語のorchisは蘭(一般にオーキッドorchidと呼ばれている)のことで,その球根の形に似ていることに由来し,またドイツ語のHoden(単数はHode,ふつう複数で用いられる)は古高地ドイツ語の包むumhüllenから由来したとされ(いわば「おくるみ」),testisよりインパクトがかなり弱い. ついでながら副睾丸(精巣上体)のepididymisのepi—はもちろん「の上に」であるが,didymisはギリシャ語で「対をなした」に由来する.つまり有対の睾丸の上にのっかったものという程の意味で,ギリシャ出身の大医学者Galenus(129〜199)が使っているという1).