著者
岡和田 愛実 金子 文成
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.689-696, 2019-07-15

はじめに ヒトは身体や外界からの情報を固有感覚や皮膚感覚,視覚から得ている.運動を実行すると,それらの運動の感覚が入力され,知覚することができる.筋紡錘への刺激である振動刺激や皮膚を伸張させる皮膚刺激などを行うことで,実際には運動が生じていないにもかかわらず運動を認知する.このように,感覚刺激により,安静にしているにもかかわらずあたかも自分自身の四肢などが運動しているように知覚することを運動錯覚という1).筆者らは,視覚刺激を用いて運動錯覚を誘導する視覚誘導性運動錯覚(kinesthetic illusion induced by visual stimulation:KINVIS)について研究を行ってきた.そこで開発されてきたシステムは,理工学的には仮想現実技術を応用したものである.また,運動の認知以前に映像内の仮想身体像に身体所有感を生じることから,脳内の身体認知システムに対する刺激方法であると言うことができる.さらに生理学的には,ニューロモデュレーション効果を発揮する刺激である. われわれは,日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)“未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業(ニューロリハプロジェクト)”の研究開発支援を受け,脳卒中に代表される中枢神経系疾患に起因する感覚運動麻痺の回復を図るための研究開発に取り組んできた.KINVISを誘導する臨床システムであるKiNvisTMは,そのプロジェクトで開発されたものである.このKiNvisTMを使用し,現在は脳卒中片麻痺患者を対象としたKiNvis療法の効果を検証している.

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