- 著者
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西丸 四方
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.64-67, 1958-04-15
狂信者というのはある考えの正当さを確信して,その考えのために活動することが非常に熱心であるような一種の熱心家のことです。熱心であるというのは人間の美徳の一つであり,価値の高いものです。これの逆はのらくらもの,なまけものです。多くの人間は多かれ少なかれなまけもので,あまり熱心に何かに打ちこむことができないのが,普通の人間です。熱心に勉強するとか仕事をするという場合には熱心ということは価値の高いものです。しかし凝り性という形の熱心家になると価値が高いとばかりいえないことになります。この場合は熱心さの内容,何をするのに熱心であるのかのその内容に価値がないのでしよう。のらくら者がパチンコをやる場合にはただひまつぶしにやるくらいのものですが,凝り性の人はどうやれば球がうまく入るかを寝食を忘れて研究します。釘のまげ方,力の入れ方などをくわしくしらべ,球の入る回数を統計的にしらべ,もしパチンコ学というものがあればその大家になれるくらいに研究に熱中するのですが,しかしこの場合にはあまり人にほめられません。熱心さには価値があるにしても,パチンコという内容にはあまり価値はないからであります。このようなパチンコ学に凝つて本職をおろそかにする人があります。碁,マージヤン,トランプに凝る人,ラジオの組立てや軽音楽に凝つて学校で落第する生徒などもこれです。