著者
中川 良尚
出版者
日本言語聴覚士協会
巻号頁・発行日
pp.19-28, 2020-03-15

失語症状の長期経過を明らかにする研究の一環として,右手利き左大脳半球一側損傷後に失語症を呈した270例の病巣別回復経過と,その中で言語機能に低下を示した37症例のSLTA総合評価法得点各因子の機能変遷の既報告を俯瞰した.次に,2年以上適切な言語訓練を行った失語症121例について,SLTA総合評価法得点に影響を及ぼす要因を調査した.その結果,1)失語症状の回復は損傷部位や発症年齢によって経過は大きく異なるが,少なくとも6か月以上の長期にわたって回復を認める症例が多いこと,2)言語訓練後に回復を示した機能は脆弱である可能性が高いこと,3)発症年齢,Wernicke領野を含む上側頭回の病変の有無,発症3か月時SLTA総合評価法得点などが予後に重要な因子であること,が示唆された. 以上のことから,失語症の訓練においては,1)長期にわたって変化しうる失語症状そのものに着目する必要があること,2)病院外来における訓練実施が望ましいこと,が考えられた.

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