著者
坂上 昇 片山 訓博
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0669, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】 ゴム素材のバンドやチューブは,スポーツや整形外科領域の理学療法におけるレジスタンス・トレーニングに,また近年では高齢者の転倒予防を目的としたトレーニングにも用いられている.バンドやチューブの抵抗力は販売メーカーから提示されており,対象者への適応に際しての指標としている.しかし,この値は実際の人体の関節運動に適用して算出されたものではない。 そこで本研究は,Thera-BandのExercise Bands(以下 Ex-Bands)を用いて,膝関節伸展運動時に発揮される抵抗力を定量化することを目的とした.【方法】 対象は,健常成人35名(男性19名,女性16名),平均年齢21.0±2.3歳とした.被験者には,研究の目的と方法を十分に説明し,参加に対する同意を得た. Ex-Bandsは,THIN(黄),MEDIUM(赤),HEAVY(緑),EXTRA HEAVY(青),SPECIAL HEAVY(黒),SUPER HEAVY(銀)の6種類とした.Ex-Bandsの抵抗力の測定には,アニマ社製徒手筋力測定器μTas MF-01を使用した.測定肢位は,治療用ベッドの端に腰掛けた端座位とした.筋力計のセンサーユニットを足関節の直上の下腿前面に取り付けた.Ex-Bandsの長さは折り返した状態の一辺が30cmとし,留め金にて固定した.環状となったEx-Bandsを治療用ベッドの支柱に通し,筋力計のセンサーユニット上を通した.測定は,下垂位より30°,45°膝関節伸展位の2条件とし,それぞれの関節角度を保持させた際の筋力計の値を読み取った.各条件の測定は2回実施し,平均値を測定値として採用した.【結果】 各Ex-Bandsの30°と45°の抵抗力は,黄が4.2±0.3kgfと4.7±0.3kgf,赤が4.6±0.3kgfと5.1±0.4kgf,緑が5.7±0.4kgfと6.3±0.4kgf,青が6.7±0.4kgfと7.4±0.5kgf,黒が7.6±0.5kgfと8.5±0.5kgf,銀が11.3±0.6kgfと12.8±0.7 kgfであった.また,各Ex-Bandsの30°と45°の抵抗力を男女別に検討した結果,両群の測定値間に統計学的有意差は認められなかった.【考察】 本研究は,Ex-Bandsの膝関節伸展運動時に発揮される抵抗力を筋力計を用いて定量化した.測定された抵抗力は,販売メーカーから提示される値とは当然ながら異なった.本研究によって得られた値は,レジスタンス・トレーニングにおける抵抗力の指標を提示でき,各々の対象者のために使用するEx-Bandsの適切な選択につながると考える。また,男女間の測定値に有意差が認められなかったことは,個人の最大筋力やレーバーアーム長の影響を受けることがないことを示唆していると考えられ,簡便な筋力測定の指標として活用できる可能性も考えられる.

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