著者
東 浩司 戸部 博
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.241, 2005 (Released:2005-03-17)

花の匂いは被子植物の多様化をもたらした植物と昆虫との相互関係を仲介する重要な要素のひとつである.演者らはすでにアケビA. quinataとミツバアケビA. trifoliataおよびその雑種とされるゴヨウアケビA. x pentaphyllaの花の匂いの化学分析から、アケビは虫媒花的であり、ミツバアケビは風媒花的であること、また、ゴヨウアケビは質・量ともに中間的であることを示してきた.さらに、アケビの花の匂いは、その化学的特性から二つのタイプに分けられることも明らかになった.本研究では、さらにアケビのサンプル数を増やすことで、アケビの花の匂いの二つのタイプがはっきりと区別されるものなのかどうかを検討した.アケビの花の匂いのGC-MS分析を行った結果、22サンプル(個体)中7サンプルはβ-ミルセンが主成分(47%_から_92%)で、かつリモネンがほとんど含まれなかった(<3%)(タイプ1).一方、10サンプルではβ-ミルセン(36_から_53%)とリモネン(33_から_50%)が約1対1の割合(比率0.85_から_1.39)で含まれていた(タイプ2).さらに今回新たに、β-ミルセン(20_から_26%)とリモネン(57%_から_76%)が1対2_から_4(比率0.25_から_0.45)の割合で含まれているタイプが見られた(タイプ3).さらに、アケビ属3種すべてのサンプルの分子系統解析(葉緑体DNA8,800塩基)を行った結果、アケビとミツバアケビはそれぞれ単系統群になり、アケビでは種内変異は見られなかった.ミツバアケビでは種内多型が見られた.ゴヨウアケビでは5個体中3個体がアケビとまったく同じ塩基配列を示し、2個体はミツバアケビのクレード内に位置した.このことから、ゴヨウアケビはアケビとミツバアケビの両方向から雑種を形成していることが示された.

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アケビが虫媒花的でミツバアケビが風媒花的だと書いてあるから、庭でより香ってるのは葉っぱ5枚のアケビの方なのかな/アケビ属の花の匂いの多様性 https://t.co/WYJsig8ArX
アケビが虫媒花的でミツバアケビが風媒花的だと書いてあるから、庭でより香ってるのは葉っぱ5枚のアケビの方なのかな/アケビ属の花の匂いの多様性 https://t.co/WYJsig8ArX
アケビの花の香りでちょい調べたら出てきた。β-ミルセンとリモネンが結構多様な割合で含まれてて匂いが違うタイプがあるとのこと。 あとの微量成分とかもあるだろうけど、ミルセンとリモネン混ぜたらあんな香りになるのかなぁ J-STAGE Articles - アケビ属の花の匂いの多様性 https://t.co/aUnAj1iXdp https://t.co/n6vbJk6R4i

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