著者
小川 佳宏
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.138, no.5, pp.178-181, 2011 (Released:2011-11-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

微生物感染に代表される急性炎症と同様に,肥満やがんなどの慢性疾患の病態に炎症性サイトカインや免疫細胞が関与することは良く知られているが,これらの疾患における持続的な炎症反応(慢性炎症)の実体には不明の点が多い.慢性炎症の分子機構は,急性炎症とは質的に全く異なっており,単なる急性炎症の繰り返しや持続化では説明できない.慢性炎症では,長期にわたるストレス応答により各臓器を特徴付ける実質細胞とその隙間に存在する間質細胞の相互作用が遷延化し,本来可逆的であるはずの適応反応の破綻により不可逆な「組織リモデリング」を生じて臓器の機能不全や種々の疾患をもたらす.最近では,ストレスを受けた実質細胞より放出される内因性リガンドとマクロファージなどの間質細胞に発現する病原体センサーの相互作用により誘導される慢性炎症として「自然炎症(homeostatic inflammation)」の概念も提唱されている.たとえば,肥満の脂肪組織では,実質細胞である脂肪細胞より脂肪分解により放出される飽和脂肪酸が間質細胞であるマクロファージに発現する病原体センサーTLR4(Toll-like receptor 4)を活性化して炎症反応が持続化するが(脂肪組織リモデリング),これは自然炎症のプロトタイプと考えることができる.自然炎症の分子機構の解明は肥満の発症・進展の理解と新しい診断・治療戦略の開発の手掛かりになると考えられる.

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