- 著者
-
樋坂 章博
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.146, no.4, pp.180-184, 2015 (Released:2015-12-10)
- 参考文献数
- 5
生体の機構を数学的に記述することで,その性質を予測し実際の治療に役立てるモデリングとシミュレーションの考え方は,創薬の成功確率を高め,同時に薬物治療の質を高めるための処方箋として強調されることが多い.一方で,生体の複雑性からモデリングによる予測が現実的にどこまで可能なのか,懐疑的な見方も少なくないと思われる.ここでは,そのようなモデリングの性質を整理するとともに,現在,モデリングが最も積極的に行われて一定の成果をあげている,薬物動態,特に薬物相互作用への適用の現状について解説する.薬物相互作用については米国FDAより2006年にレギュレーションとしてガイダンス案が示され,その中で多くのモデリング技術が実際に提示され,新薬申請パッケージの中でそれらが実行されることで,臨床における薬物相互作用の予測性,さらには網羅性が高まっている方向にある.そのような方法論を広げていく場合の課題についても考察したい.