- 著者
-
岡本 浩一
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.150, no.2, pp.92-97, 2017 (Released:2017-08-08)
- 参考文献数
- 21
現在,吸入療法には,気管支喘息もしくは慢性閉塞性肺疾患などを対象とした局所作用薬が用いられている.吸入剤には,吸入液剤,吸入エアゾール剤,吸入粉末剤がある.吸入液剤はネブライザを用いて生じる微細な液滴を吸入するので,乳幼児から高齢者まで使用できるが液の無駄が多い.吸入エアゾール剤は1950年代から広く使われてきたが,環境問題がある.吸入粉末剤は環境にやさしく吸入の失敗が少ないが,高度な粒子設計と使いやすい吸入デバイスの開発が必要である.肺は全身作用薬の吸収部位としての利点を多く備えており,消化管吸収が困難なペプチド性医薬の吸入剤化研究が進められている.しかし,2006年に米国と欧州で承認されたインスリン吸入粉末剤は,売り上げが伸びず翌年には製造中止となった.2014年に米国で承認された新しい粉末剤も売り上げが伸び悩んでいる.今後肺局所疾患を対象とした抗体医薬や核酸医薬の開発が期待される.