著者
水内 俊雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.24-49, 1991-06-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
41

地方政府による公共サービスの供給は,経済社会政治的に多様な様相を有する。近年人文地理学において,国家や地方政府の役割,特に国家の介入と言う概念が重要視されてきた。この背後には人文地理学における多様な社会理論論争があった。本稿ではこうした欧米諸国の知的刺激を,戦前期の都市財政資料を用いて,マクロ理論的にかっ歴史的具体的に展開しようとするものである。この展開に際しては,実在論者 (Realist) の示唆する理論的多元主義 (Theoretical pluralism) を念頭においた。国家の役割に関する唯物主義的見方,そして公共サービスの地理学で得られた成果などを折衷的に利用して,戦前期の日本の都市財政構造と,公共サービスの供給パターンを明らかにした。 6大都市政府による都市建造環境への介入の圧倒的な強さが証明され,その政治的社会的背景も明らかにした。またその他の都市についても,地方特有の性格を重視することにより,公共サービス供給に関する柔軟な説明を加えることができた。

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