著者
副島 研造
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.305-313, 2020-08-20 (Released:2020-09-04)
参考文献数
14

トランスレーショナルリサーチ(TR)は,1990年代半ばころから米国においてその重要性が注目され,新薬などの開発に大きな役割を果たしてきた.本邦においては,2007年から文科省によるTR支援推進プログラムが策定され,本格的な取組が開始された.TRの主役はアカデミアであり,アカデミアで生み出された有望なシーズを,アカデミアにおいていかに育成し,実用化に近づけるかが成功の鍵となる.この20年間において肺癌は医学領域,特にがんの領域においては最もTRの恩恵を受けた領域であり,様々なドライバー遺伝子の発見と分子標的治療薬の開発や免疫チェックポイント阻害薬の開発など,まさしくTRの大きな成果である.ただ残念ながらTRの元となるシーズは本邦のアカデミアで見出されたにも関わらず,アカデミアによるシーズ支援体制の不備や,日本の製薬企業の体力不足などにより,薬剤についてはその多くが海外の企業により開発され,日本にはその恩恵が十分に還元されていないのが現状である.今後はバイオ医薬品を中心とした新規モダリティの薬剤が次々と登場してくることが予想されるが,開発にあたっては着実な戦略に基づき行うことが重要である.

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