著者
荒木 亮
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.94-102, 2020-07-31 (Released:2020-08-20)
参考文献数
64

鳴鳥である鳴禽類はそれぞれの種で特異的な特徴を備えた個体独自の歌をさえずり,求愛や縄張りの主張,個体の識別に用いている。ヒトの幼児が親の話すことばを聴き真似ることで次第に言語の発声を獲得してゆくように,鳴禽類のヒナは成鳥のさえずりを記憶し,記憶を頼りに未熟な発声から次第に成鳥と同様のさえずりへと発達させることで,種特異的な特徴を備えた歌を身につける。このためヒトの発声学習の理解につながるモデルとして,歌学習の神経メカニズムが盛んに研究されてきた。しかし,同種へ向けた情報伝達に重要となる歌い手の種を表す歌の形質を,個体識別可能なまでに歌が多様化する中でどのようにして維持するのか,その神経基盤については多くが不明のままである。鳴禽類の一種であるキンカチョウは集団で繁殖し,ヒナは複数個体のさえずりを聴きながら個体独自の歌を発達させる。本稿では,キンカチョウの種特異的かつ個体独自な歌の発達過程と,その獲得を発達初期で支える聴覚野神経の神経活動について著者の研究も含めながら紹介し,今後の課題について論ずる。

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