著者
塩谷 治彦
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.60-83, 1995-04-15 (Released:2009-11-16)
参考文献数
33
被引用文献数
1

この論文は、今日の暴走族や不良生徒集団など青少年の非行や逸脱行動を社会病理学的に理解しようとする試みである。エリクソンの自己同一性に関する発達理論は、青年期の非行や逸脱行動を理解するための枠組みとして貢献してきたが、それは概ね発達心理学的アプローチであって、非行を社会病理学的に理解しようとするものではなかった。そこで本論では諸価値の凋落による価値の主観化、またそれに伴う競争社会化という視点を青少年の病理を解明するために導入した。そして今日の大人になりたがらない青少年の心理の背景に世界の脱価値化に伴う競争社会の浸透という事態があることを示した。暴走族などの非行を理解するため、同一性危機や青年期危機による非行という概念が提示されてきたが、これらの理論は概ね非行を発達上の危機の現れと見ているため、青少年の病理の社会学的要因を十分に解明していない。現代的な非行現象には世界の非価値化と競争社会状況に対する反感が認められるのであり、それが彼らを暴走族や不良集団などへの参加と逸脱にかりたてる重要な動機であることを示した。

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暴走族に関する論文もあるんだ。「価値の転倒と少年非行」https://t.co/X5dkkEvj

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