著者
鄭 南
出版者
コミュニティ政策学会
雑誌
コミュニティ政策 (ISSN:1348608X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.205-228, 2005 (Released:2014-07-31)
参考文献数
29

20年以上の国有企業改革と市場経済の進行に伴い、中国の社会保障体制は大きな変容に直面するようになった。急激な階層化、地域間の経済格差の拡大と地方分権化の進行は中国の社会保障に独自の様相をもたらしている。中国の社会保障体制の変容を理解するために、本論文は社会保障の体制比較に関する理論を参照して、計画経済時代の社会保障、市場経済化の展開に伴う現在の社会保障改革を位置付け、比較体制論の見地から理論的に検討する。さらに、中国社会保障システムの市場化過程中の変容の独自性を提えるために、本論文は「地域コーポラティズム」という概念を用いて地域間の社会保障における格差の発生要因を説明する。すなわち、計画経済時代に単位は平等主義という原則で社会保障において大きな役割を果たしてきたが、現在では地方分権化によって地域は再分配に関わるシステムに変化しつつある。地方政府というローカルな権威は大きな役割を果たし、そのイニシアチブの大きさは経済発展のみならず社会保障においても異なる結果をもたらしている。地域コーポラティズムの形成は一時的なものではなく、これからも社会保障に大きく影響するだろう。単位保障の後退によって、都市部においても家族(親族)保障の役割もますます大きくなるだろう。

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