著者
天野 治
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.759-765, 2006 (Released:2019-04-05)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

石油は1次エネルギーの40%を占め, われわれの生活を豊かなものにしている。ところが, われわれ人類は, 石油をこの50年で半分使いつつある。それも取り出しやすい, 経済的なものから使っている。残っているものは, 取り出すためにエネルギーがかかるものである。得られるエネルギーを取り出すためのエネルギーで除したものがEPR (energy profit ratio, エネルギー収支比) である。EPR=1はエネルギーを得るのと, 取り出すためのエネルギーが同じことを意味する。これは, 益がない。取り出すためのエネルギーとして, そのためにかかるすべての項目を可能な限り算定する。燃料の採掘, 輸送, 発電所の建設, 運転, 補修, 廃炉, 廃棄物処理・処分までを含む。EPRが高いことは, 石油の代替として有力な候補となる。 ウラン濃縮に遠心分離法を用いた原子力発電はEPRが高い。従来のガス拡散法はウラン濃縮に莫大なエネルギーが必要となり, 人力エネルギーを大幅に増加させるため, EPRは低くなる。EPRを高めるには, 出力エネルギーを増加させることも有効な方法である。具体的には, 稼働率を向上させること, 定格出力を上げることである。 風力発電や太陽光発電のEPRは高くはない。これは, 風の強さ, すなわち出力エネルギーが定格の60%以下と低いことと稼働率が低いことによる (風力は風が吹いている間, 太陽光は日中のみ)。LNGは気体であり, 輸送のために液化するエネルギーを費やすので, 石油火力や石炭に比べてEPRは低い。

言及状況

外部データベース (DOI)

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10年以上前の電中研報告。製造や輸送、使用終了後の廃棄まで(ゆりかごから墓場まで)の消費エネルギーに対する発生エネルギーの比率:EPRを見るに、太陽光・風力をはじめとする再エネは軒並み低く、原子力・水力はおろか、石炭火力にも劣後します。 https://t.co/fQI5S77Pfq

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