著者
大坊 郁夫
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.122-137, 2003-07-31 (Released:2017-04-29)

個人間のコミュニケーションは,同時的に展開される記号化と解読の連鎖によって成立する.その過程には多様な心理・社会的な要因が作用しており,社会心理学の立場からみて多くの重要な課題が含まれている.コミュニケーション行為は社会的規範や文化的事実を反映した心的メッセージを伝えるものである.言語的・非言語的コミュニケーション研究は身体部位に由来するチャネルとしての用法の理解から相互の関連性を理解する機能的統合へと進展してきた.また,間接的,限定的なコミュニケーションの登場によって,十分な社会性を獲得できず,責任性の希薄な関係となる可能性が高くなってきている.したがって,周到なコミュニケーション研究を通じて,高度に親密な関係を築くための努力が必要である.いくつもの非言語的チャネルで同調傾向の存在が確認されていることは,「社会性」を考える上で重要な構造的,要素的アプローチの是非を問う議論をさらに喚起するものである.対人的コミュニケーションは,元来個別の行為が加算されるのではなく,自ずと高度に統合された全体性を持つと考えられる.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (2 users, 2 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト