- 著者
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広瀬 幸雄
- 出版者
- NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
- 雑誌
- シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.2, pp.97-104, 2019-03-30 (Released:2019-07-10)
- 参考文献数
- 37
本論文では,社会心理学においてゲームシミュレーションが研究や教育の方法として利用されてきた経緯を振り返り,ゲームシミュレーションの課題と今後の可能性について議論する.社会学の教育プログラムとしてのSIMSOCを社会心理学の研究方法として利用するためにゲームの仕組みを大幅に改変した仮想世界ゲームは,リーダーシップの発生や社会的アイデンティティの獲得,さらには社会的ジレンマの解決のダイナミックなプロセスを分析する有用な道具であることが確認できた.また,人々の望ましくない行動によって生じる社会問題の解決策を発見するために,様々なゲームシミュレーションが社会心理学者によって開発されて,大学だけでなく地域において教育プログラムとして利用されるようになった.そうしてゲームシミュレーションは社会心理学では実験室実験や社会調査の代替的な研究・教育方法としての評価が得られるようになった.今後の課題としては,高レベル放射性廃棄物の地層処分のようなNIMBY問題など人々の価値観の対立によって合意形成が困難な問題の解決策を検討するためのゲームシミュレーションを開発し,解決策を促進阻害する要因を発見することが必要となるであろう.