著者
竹本 太郎
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.16-30, 2021 (Released:2021-09-30)
参考文献数
96

森林官という個人の視点から,組織やネットワーク,移動の実態を明らかにする研究が環境史分野で注目を浴びている。本稿では,日本帝国を対象として,本国と植民地における森林管理を比較するため,齋藤音作という森林官の前半期の足跡として,日本統治初期の台湾と,森林法施行後の山梨県における経験をみた。台湾では,原住民教育に従事し,玉山東峰への登頂やヒノキ属の発見に貢献するが,阿里山森林の調査中に事件を起こして帰国した。山梨では,入会御料地を保安林に編入するため,御料局に対して正確な調査に基づく実態を突きつけたが,地元住民に対しては無理のない資源利用の提案をした。齋藤音作は,森林管理に必要な学知を有することに加えて,現場の課題に対して柔軟に対応できる「ジェネラリスト森林官」であった。初期の日本帝国にとって,現場の森林官は,既存の学知に「現場知」をフィードバックしてくれる修正者であったといえる。

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日本帝国における植民地森林官の思想と行動:齋藤音作の前半期の足跡から~竹本太郎(東京農工大学大学院農学研究院)https://t.co/ytU6wTmDzI

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