- 著者
-
丸山 菜穂子
- 出版者
- 一般社団法人 日本助産学会
- 雑誌
- 日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.23-33, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
- 参考文献数
- 47
- 被引用文献数
-
4
目 的妊婦の孤独感の程度と背景,社会的関係性から関連要因を探索することおよび,孤独感の母性役割の同一化,マイナートラブルへの影響を探索することを目的とした。孤独感は「社会的関係性における願望が量的,質的に満たされないときに生起する主観的な不快感情」と定義した。対象と方法2015年7月から10月に都内近郊の5周産期医療施設にて,妊娠34週以降の妊婦1,675名を対象に,改訂版UCLA孤独感尺度(得点範囲は20点から80点で高いほど孤独感が高い),ソーシャルサポートの量と満足度,女性に対する暴力スクリーニング尺度(DVスコア),母性役割の同一化,マイナートラブルを含む質問紙調査を行った。有効回答1,310部(78.2%)を統計的に分析した。結 果1. 孤独感得点の平均は33.1点であり,高い妊婦は平均42.3点の先天性胎児異常を指摘されている妊婦,平均38.8点のシングルマザー,平均37.0点の中卒の妊婦であった。2. 重回帰分析の結果,サポートの満足度が低いほど(β=−.331),サポート量が少ないほど(β=−.161),世帯収入600万円以上を基準として300万円以上600万円未満(β=.104),300万円未満(β=.141)と低いほど,精神疾患の既往があり(β=.111),DVスコアが高いほど(β=.069)孤独感は高かった(調整済R2=.21)。3. 孤独感が高い妊婦は母性役割の同一化が低かった(β=−.428, p=.000)が,孤独感とマイナートラブルの発症頻度との関連は認められなかった。結 論孤独感の高い妊婦は胎児異常を指摘されている妊婦と社会的脆弱性をもつ妊婦であった。早期発見のために精神状況とともにサポート・経済状況,DVについて情報収集する必要がある。孤独感の高い妊婦の母親になる過程を支えるために,助産師の継続的個別的支援が必要である。