著者
松本 学
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.234-242, 2009-09-10 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
3

本研究の目的は,口唇裂口蓋裂(Cleft lip and/or palate;CLP)を有する人々について,各発達期における自己の意味づけの特徴とその変化を明らかにすることである。CLPは,先天的可視的変形の代表的疾患であり,機能障害の他に裂による可視的変形を有している。このため,発達早期から成人期に至るまで継続した治療を必要とする。T大学歯学部付属病院に口腔管理治療のため来院した成人期CLP者14名(男性6名,女性8名,平均年齢25.4歳,両側性口唇口蓋裂5名,片側性口唇口蓋裂9名)に対して,同病院外来にて児童期から成人期までのCLPに関する経験についての回想的語りによるライフストーリーインタビューを行った。その結果,彼らの自己の意味づけ特徴として【「傷」がある自己の意味づけ】,【自己理解に影響する要因の意味づけ】,【対処】の3つの概念が生成された。この特徴の各発達期における変化を見ると,児童期前期の<機能障害・可視的変形への気付き>から児童期中期から後期の<他者との違いの理解>,思春期の<低い自己評価>,青年期後期から成人期の<CLPをもった私の理解>へと変化していた。今後の課題として,本研究の知見に基づき,CLP者の自己の個別発達の検討および,発達的支援の構築が急務であると考えられた。

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