著者
宮下 直
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.321-326, 2008 (Released:2009-01-20)
参考文献数
22

クモ類は陸上生態系を代表するジェネラリスト捕食者であり,その約半数の種は植物上や地表に網を張って生活する造網性である。造網性クモ類は,捕食様式や生息場所が多様なうえに,餌や棲み場所の資源量や個体数などの把握が容易であるため,シカによるインパクトの研究には大変好都合な材料である。著者らは房総半島で,シカが森林の造網性クモ類に影響を与える仕組みや,クモの密度変化が餌昆虫に及ぼす影響を明らかにした。植生上のクモ類はシカ密度とともに減少したが,それには餌条件ではなく造網足場である下層植生の減少が効いていた。また造網性クモ類に寄生するイソウロウグモ類では,減少率がさらに顕著であった。一方,地表のリター上に造網するクモ類では,シカがいると増加する傾向があった。これは,地表の植物被度の減少が地表性種にとってはプラスに働いていることが原因と考えられた。さらに,シカの増加による植生上のクモ類の減少は,土壌由来の飛翔性昆虫類を増加させることがわかった。今後,こうした相互作用連鎖を理論面から一般化する試みが重要であろう。

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「生態系の相互作用連鎖を解き明かす シカとクモの間接的関係」 https://t.co/K5MGhbEsb4

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