著者
三條場 千寿 亘 悠哉 松本 芳嗣 宮下 直
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-8, 2021-03-25 (Released:2021-03-19)
参考文献数
76
被引用文献数
1

Toxoplasmosis is a zoonosis caused by Toxoplasma gondii, which infects almost all mammals and birds. Felids are definitive hosts that shed oocysts of T. gondii with their feces, which is then transmitted by oral ingestion. The study analyzed the prevalence of T. gondii infection in free-ranging cats on Tokunoshima Island, Kagoshima Prefecture from 2017 to 2018, and found a seropositivity rate of 47.2% (59/125). This result indicated the importance of understanding and managing the behavioral patterns of felids, including the free-ranging cats. Toxoplasmosis is also an important food-borne parasitic disease due to its ability to be transmitted by consuming undercooked meat of infected animals. Considering that all developmental stages of T. gondii, including oocyst, tachyzoite, and cysts, are capable of infection, a One Health approach that considers the health maintenance of humans, animals, and the environment is important for the control of toxoplasmosis.
著者
梅田 泰圭 新海 明 宮下 直
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.95-99, 1996 (Released:2007-03-29)
参考文献数
12
被引用文献数
8 8

ミジングモ属 (Dipoena) 3種の捕獲していたアリの種, サイズ, 個体数を調査した. シモフリミジングモ D. punctisparsa は比較的小型のケアリ属を専食し, 大型の個体は一度に多数のアリを捕獲する傾向がみられた. ボカシミジングモ D. castrata の餌はケアリ属とオオアリ属が中心で, ほとんどが単数のアリを捕獲していた. 本種は成長にともない, 大きいアリを捕らえる傾向があった. カニミジングモ D. mustelina は非常に小型の種から大型の種までさまざまな種のアリを捕獲していた.
著者
難波江 靖 辻本 聖也 宮下 直 中島 覚
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.573-581, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
23

福島第一原子力発電所(FDNPP)からの放射性セシウムの移行経路を同定するため,新潟及び山形県の沖合において海底土を採取し,放射能を測定した。福島第一原子力発電所に由来する134Csは酒田沖及び加茂沖の海底土から検出(0.16±0.03〜0.68±0.02 Bq/kg)されたが,直江津沖の海底土からは検出されなかった。これらの結果より,FDNPP事故由来の放射性セシウムの流出源が直江津の北東地域から阿賀野,最上川を含む酒田までの地域である可能性が示唆された。
著者
金子 是久 明星 亜理沙 長谷川 雅美 宮下 直
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.189-199, 2013-12-25 (Released:2014-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

In this study, we aimed to investigate the habitat of grassland plants which flower in the spring, compared to the difference of the long-term mowing management of semi-natural grasslands in the Shimousa plateau in the Chiba Prefecture of Japan. In grassland plants which flower in the spring, Ranunculus japonicus and Lathyrus quinquenervius were found in the section mowed 1 time per year according to the May survey. However, the appearance frequency and presence of Potentilla freyniana, Potentilla fragarioides,and Polygonatum odoratum were high in the sections mowed 3~4 times per year. We considered that in Ranunculus japonicus and Lathyrus quinquenervius, their germination and growth are suppressed gradually, their roots decline, and plants will not grow soon. Potentilla freyniana, Potentilla fragarioides,and Polygonatum odoratum have grown under good sunshine with low-medium herbaceous conditions, and have adapted repeating seed dispersal and vegetative propagation in the environment of mowing 3~4 times per year for more than 20 years. Many Luzula capitata and Ixeris dentate were found in the environment that conducted excessive mowing of 10 times or more per year for more than 10 years. These species have developed repeating seed dispersal and vegetative propagation under the environment of intense mowing pressure for a long time, not being suppressed. On the other hand, Pteridium aquilinum, Potentilla fragarioides, Potentilla freyniana, Chaenomeles japonica, and Imperata cylindrica have grown, adapting to the cover of tall herbs. We considered that the appearance of grassland plants which flower in the spring has been affected by the differences of continuous mowing frequency for a long time and the presence or absence of the inhibition of high-stem herbaceous plants by mowing frequency after blooming and fruitage.
著者
松河 秀哉 北村 智 永盛 祐介 久松 慎一 山内 祐平 中野 真依 金森 保智 宮下 直子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.307-316, 2007
被引用文献数
4

本研究では,高校生から得られたデータに基づいて,データマイニングを活用した学習方略フィードバックシステム「学習ナビ」を開発した.システムの試験運用をふまえ,(a)モデルの妥当性(b)学習ナビで利用したメタファの有効性(c)ユーザからの主観的評価の観点から評価を行い,以下の結果を得た.(a)モデルが仮定する学力差が評価モニタにもみられ,モデルの妥当性が示唆された.(b)学習方略の達成度を表す信号機メタファについて,解説画面の閲覧時間の差から有効性が確認された.学習方略の順序性を表す一本道メタファは,評価モニタの約半数の理解を得た.(c)一部のユーザからアニメーションの長さを指摘された以外は,システム全体として好意的な評価を得た.
著者
宮下 直 新海 明
出版者
日本蜘蛛学会
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-10, 1995 (Released:2007-03-29)
参考文献数
15
被引用文献数
5 7

網のデザインと餌捕獲能力との関係をジョロウグモとナガコガネグモを用いて調べた. 大型の厚紙のフレームでクモの網を枠取りし, 同じ微生息場所に設置した. ジョロウグモの網はナガコガネグモの網より多くの餌がかかる傾向があったが, これは前種で粘着糸が多いからである. しかし, 比較的大きな餌 (2-6mm) の比率はナガコガネグモの方が大きかった. これはおそらく網糸に付着している粘着物質の量が多いからであろう. 大型の餌 (20-25mm) に対する網の捕捉能力を評価するため, 大型餌を網に付加する実験を行った. 餌が網に捕えられている時間は, ばらつきが大きいものの種間で似かよっていた. ジョロウグモの網は, 非常に小型の餌とともに大型の餌を捕獲する機能も有していると考えられた.
著者
国武 陽子 寺田 佐恵子 馬場 友希 宮下 直
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.217-220, 2010 (Released:2010-10-05)
参考文献数
8

アオキ (Aucuba japonica) の花粉媒介様式と主要な花粉媒介者を, 網掛けによる訪花者の排除実験と訪花昆虫の観察から推定した。花序当たりの結果率は, 花序に網 (1 mmまたは3 mmメッシュ) を掛けて昆虫の接触を制限すると, 無処理区に比べて著しく低下したが, 網を掛けて人工授粉を施すと無処理区との差はみられなかった。また, 1 mmと3 mmメッシュの網では, 網掛けの効果に有意な差はみられなかった。以上の結果より, アオキの種子生産は主に虫媒依存であることが示唆された。次に訪花昆虫の同定と体サイズの測定より, 花粉媒介者は, ジョウカイボンおよびゾウムシなどのコウチュウ目や, クロバネキノコバエなどの長角亜目であることが推測された。花粉媒介はこれらの昆虫の機会的な訪花に依存していると考えられる。
著者
柳 洋介 高田 まゆら 宮下 直
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.65-74, 2008-05-30 (Released:2018-02-09)
参考文献数
51
被引用文献数
7

房総半島の森林において、シカが土壌の物理環境へ与える影響とその因果関係を明らかにするための広域調査と野外操作実験を行った。広域調査では、シカ密度と森林タイプ(スギ林、ヒノキ林、広葉樹林)の異なる林で、土壌硬度やリター量といった土壌の変数と、下層植生の被度や斜度などの環境変数を調査した。このデータをもとに、パス解析とBICを用いたモデル選択を行い、因果関係を推定した。スギ林においては、シカ密度はリター量や土壌硬度に何ら影響を与えていなかった。ヒノキ林では、シカ密度が下層植生被度の減少を通して土壌硬度を上昇させ、リター量を減少させる間接的な経路が検出されたが、広葉樹林では、シカ密度が土壌硬度に直接影響する経路が選択された。操作実験では、スギ林とヒノキ林においてシカの嗜好性植物の刈り取り処理を行った。その結果、ヒノキ林では、嗜好性植物の除去が土砂やリター移動量を増加させ、土壌硬度を上昇させたが、スギ林では広域調査と同様に、そうした影響は検出されなかった。以上の結果から、シカが土壌の物理環境へ与える影響は森林の樹種構成によって大きく異なること、また土壌の物理性の変化については、雨滴衝撃や土砂移動によって地表面にクラスト層が形成されていることが示唆された。こうした土壌環境の改変は、生態系のレジームシフトを助長する可能性があり、今後詳細な研究が不可欠と思われる。
著者
宮下 直
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.17-21, 1991 (Released:2007-03-29)
参考文献数
10
被引用文献数
14 16

ジョロウグモを野外網室内で3つの異なる条件下で飼育し, 成長経過を調べた. 餌供給量の違いは, 成長速度やサイズに強い影響を与えた. 野外における3つの個体群の平均サイズの変異は大きかったが, いずれも飼育下におけるサイズの範囲内にあった. これらの結果は, 野外個体群における餌資源の制約とともに, 成長過程の可塑性を示すものである.
著者
国武 陽子 寺田 佐恵子 馬場 友希 宮下 直
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.217-220, 2010 (Released:2011-05-27)

アオキ(Aucuba japonica)の花粉媒介様式と主要な花粉媒介者を、網掛けによる訪花者の排除実験と訪花昆虫の観察から推定した。花序当たりの結果率は、花序に網(1mmまたは3mmメッシュ)を掛けて昆虫の接触を制限すると、無処理区に比べて著しく低下したが、網を掛けて人工授粉を施すと無処理区との差はみられなかった。また、1mmと3mmメッシュの網では、網掛けの効果に有意な差はみられなかった。以上の結果より、アオキの種子生産は主に虫媒依存であることが示唆された。次に訪花昆虫の同定と体サイズの測定より、花粉媒介者は、ジョウカイボンおよびゾウムシなどのコウチュウ目や、クロバネキノコバエなどの長角亜目であることが推測された。花粉媒介はこれらの昆虫の機会的な訪花に依存していると考えられる。
著者
宮下 直
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.81-88, 1996 (Released:2007-03-29)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

This paper reviews inter- and intraspecific competition in web-building spiders in the field. Although interspecific competition was thought to be important in spider communities, recent field experiments have revealed that it is infrequent. Intraspecific competition is also not common at the population level. Possible reasons for the absence of competition in spider populations are discussed.
著者
矢部 志津 松尾 尚子 込山 立人 藤平 耕一 古賀 勝 八幡 忠良 宮下 直樹 有川 善久 松浦 直人
出版者
一般社団法人 日本写真測量学会
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.262-268, 2015 (Released:2016-01-01)
参考文献数
3

This technical report introduces JAXA's recent activities on small satellites. The activities include hearing about needs from private sector, drafting business models and a plan of a small satellite constellation, providing launch service by the H-IIA rocket and the International Space Station, utilization of JAXA's small satellite, providing JAXA's test facilities for satellites, and etc.
著者
宮下 直
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.321-326, 2008 (Released:2009-01-20)
参考文献数
22

クモ類は陸上生態系を代表するジェネラリスト捕食者であり,その約半数の種は植物上や地表に網を張って生活する造網性である。造網性クモ類は,捕食様式や生息場所が多様なうえに,餌や棲み場所の資源量や個体数などの把握が容易であるため,シカによるインパクトの研究には大変好都合な材料である。著者らは房総半島で,シカが森林の造網性クモ類に影響を与える仕組みや,クモの密度変化が餌昆虫に及ぼす影響を明らかにした。植生上のクモ類はシカ密度とともに減少したが,それには餌条件ではなく造網足場である下層植生の減少が効いていた。また造網性クモ類に寄生するイソウロウグモ類では,減少率がさらに顕著であった。一方,地表のリター上に造網するクモ類では,シカがいると増加する傾向があった。これは,地表の植物被度の減少が地表性種にとってはプラスに働いていることが原因と考えられた。さらに,シカの増加による植生上のクモ類の減少は,土壌由来の飛翔性昆虫類を増加させることがわかった。今後,こうした相互作用連鎖を理論面から一般化する試みが重要であろう。
著者
石田 健 宮下 直 山田 文雄
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.159-168, 2003-12-30 (Released:2018-02-09)
参考文献数
23
被引用文献数
1

外来種の駆除が課題となっている生息地の生態系管理の問題点を紹介し今後の課題を議論した. 複数の外来種が生息している場合に, 一方の種だけを駆除すると, 他の外来種が増加して在来の生物群集に新たな影響を与えることが知られ始めており, その事例とモデルを紹介した. 外来種のジャワマングース(Herpesj jabanicus)の駆除事業が実施されている南西諸島の奄美大島では, 別の外来種であるクマネズミ(Rattus rattus)が多数生息するようになっており, 同様の懸念がある. 捕食性外来種の生息密度, 増殖率および食性と, 被食計の生息密度のほかに, それらの生物群集を支える主要な一次生産であり結実の年変動の大きいスダジイ(Castanopsis sieboldii Hatusimaex Yamazaki et Mashiba)の堅果生産量の変動をモニタリングする必要についても紹介した. 最後に奄美大島の森林生態系保全における順応的管理と研究者の役割について, 議論した.
著者
池松 大志 中江 俊博 長森 藤江 井前 麻理子 宮下 直也 木全 英明
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:21888701)
巻号頁・発行日
vol.2016-CVIM-200, no.14, pp.1-6, 2016-01-14

機械学習を用いた画像認識では,高精度の判定を可能にするために,大量の画像データと正解ラベルからなる学習データセットを用意する必要がある.学習データセット構築作業の効率化を目的としてラベル付与の自動化やクラウドソーシングが実施されているが,属人的・専門的な判断を要する場合については,むしろエンドユーザ自身によってラベル付与を実施することが望ましいと考える.そこで,本研究ではエンドユーザ自身が画像収集からエンジン生成までを効率的に実施することが可能な学習器のインターフェースの開発を行い,エンジン生成に要する作業時間の短縮を図った.具体的には,Deep Learning フレームワークとして広く利用されている Caffe を用いた Deep Learning 学習 API(Application Programming Interface) の開発および画像検索 API とのマッシュアップによる画像収集・登録・学習インターフェースを開発した.
著者
宮下 直
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

東京大学農学部付属演習林田無試験地に環境条件の異なる3調査地を設け(林内・林縁・草地)、それぞれに底辺5m×5m、高さ2.5m、メッシュ2cmの鳥が侵入できない網室を設置した。網室内には鉢植えにした高さ約1.8mのマツの苗木を6本づついれた。また、対照区として、各網室の外に同数のマツの鉢植えを設置した。各実験区に7月6日にジョロウグモとナガコガネグモの幼体をそれぞれ24および15匹づつ放して、その後の個体数の変化を調べた。ナガコガネグモはジョロウグモに比べて減少速度が速かったが、いづれの種についても網室の内と外で顕著な差はみられなかった。したがって、鳥類の捕食はこれらのクモ類にとって重要ではないと判断された。トラップにより捕獲した飛翔性の昆虫類の量は、草地>林縁>林内となったが、クモ類の体サイズもほぼこれに対応していた。ナガコガネグモでは生残率でも同様な傾向が見られたが、ジョロウグモでは全く逆の関係にあった。次に、クモの捕食により餌となる飛翔昆虫が減少するかを調べるため、上記の実験のうちでジョロウグモが多く定着した3調査区と、それぞれに隣接したクモのいない場所に飛翔昆虫捕獲用のトラップを設置した。その結果、クモの存在する区では飛翔昆虫類が少ないことが分かった。したがって、ジョロウグモの様な大型の造網性クモは、局所的に昆虫類の量を減少させうることが示された。今回の結果から、鳥、クモ、飛翔昆虫の3者間の関係は前2者間の関係の欠如により成立していなかったが、今後鳥類の繁殖期に当たる春期における同様な実験が必要であろう。
著者
宮下 直
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.79-82, 1995 (Released:2007-03-29)
参考文献数
2

希少種オノゴミグモ Cyclosa onoi TANIKAWA の成長, 繁殖, 造網場所, 個体数の変動について調査した. 本種は年2世代であり, 6-7月と9-10月に繁殖を行うことが明らかになった. また造網場所が非常に低いという特徴があった. 集団のサイズは非常に小さく, 3世代調査した後に絶滅した. 本種の生活史の特徴を近縁種との比較により議論した.
著者
宮下 直 滝 久智 横井 智之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

1.ミヤマシジミの調査① 畦畔管理によるミヤマシジミの寄生率への影響: 継続調査している畦畔管理実験区内で各世代のミヤマシジミ幼虫密度と、寄生の有無、アリ随伴を記録した。主な寄生者はサンセイハリバエで、共生アリの随伴個体数は負に、幼虫密度と高刈り操作は正に効いていた。土壌由来のシヘンチュウによる寄生率は、高刈り操作と降水量による正の有意な影響があった。草丈を抑える畦畔管理は2種類の寄生者からのトップダウンを軽減する効果が期待できると示唆された。 ② 畦畔管理によるミヤマシジミの局所個体群サイズへの影響:2018年~2021年までの各世代の幼虫個体数を全生息地パッチで記録した。その結果、実験を行っている生息地パッチは実験していない生息地パッチに比べて、個体数増加しているパッチの割合が有意に高く、適した時期と強度の撹乱は局所個体群サイズを増加させることがわかった。2.ソバの送粉サービス① 各昆虫種の送粉効率の推定:早朝から夕方にかけて、ソバに訪花する昆虫をビデオで撮影した。撮影した花序は結実率を推定した。送粉効率を推定するモデルとして、資源制限を考慮した階層モデルを構築した。解析の結果、一回訪花あたりの結実率はミツバチ類やハエ類、コウチュウ類が高く推定され、送粉サービス量はセイヨウミツバチとコウチュウ類で高い結果となった。 ② 畦畔管理による送粉サービスへの影響:ソバの播種から収穫直前まで畦畔での草刈りを控えた維持区と、通常の草刈り区において、訪花昆虫と結実率を調査した。その結果、草刈り区よりも維持区で訪花昆虫個体数と結実率が高く、コウチュウ類やハナアブ類の個体数が増加していた。また、畦畔の開花植物の訪花昆虫と夜間に植物体上で休息している昆虫を調査した結果、どちらの機能も重要で、送粉サービス維持には生息地としての機能の多様性が必要であることが示唆された。
著者
宮下直編
出版者
東京大学出版会
巻号頁・発行日
2000