著者
田中 敏嗣
出版者
日本混相流学会
雑誌
混相流 (ISSN:09142843)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.41-47, 1994-03-15 (Released:2011-02-22)
参考文献数
5
被引用文献数
1

もう既に聞き飽きた感もあるが、計算機環境の発達によりさまざまな現象が数値シミュレーションにより取り扱われるようになった。混相流のような複雑な流れに対しても、流動を数値シミュレーションにより再現する試みが果敢になされている。最近では、ワークステーションの大幅な能力向上に代表される計算機のダウンサイジングにより、このような数値シミュレーションがより身近なものとなりつつあるのではないだろうか。混相流は時間的および空間的にさまざまなスケールの現象を含んでいるが、計算機の演算能力と記憶容量の増大は、よりミクロな視点に基づくモデルに立脚した数値シミュレーションを可能にする。固気二相流の分野では現在、固体粒子群の運動を個々の粒子レベルでモデル化するラグランジュ型の数値計算が盛んに行われている。この場合に気体の流れの計算には一般的な流体の数値解法が適用できるので、混相流としての特殊性は気流中の粒子群の運動をいかに解くかということと、気流に対する粒子の作用にある。本講座は数回にわたって連載を行うシリーズの中の第1回目であり、本シリーズでは固気二相流をラグランジュ型の数値シミュレーションで取り扱う際に問題となる粒子間衝突の有力な計算法として期待されるDSMC (Direct Simulation Monte-Carlo) 法と、その固気二相流への応用について述べる。DSMC法は希薄気体の流れの数値シミュレーション法としてBird [1] によって1976年に発表されたものであり、現在盛んに応用が行われている。DSMC法では、分子間の衝突判定に確率論的方法を用いることにより、実在する分子数に比べて少数の分子を追跡して、分子群の運動が求められる。この方法を粒子運動の計算に用いれば計算で扱う粒子数を軽減する他に衝突の判断も簡略化できるので、分散系粒子流動の数値シミュレーションを高濃度あるいは規模の大きな流れに拡張するために有望な方法である。さらに、DSMC法の考え方は固気二相流中の粒子運動のみならず、分散系混相流中の分散相の衝突的相互作用を考える場合にも参考になるものと考えられる。まず本報では、どのような場合に粒子間衝突の影響が問題となるかを示し、具体的な計算結果によって粒子間衝突の影響を紹介する。その後、DSMC法を理解するために必要な分子気体力学の基礎概念の解説を行う。

言及状況

外部データベース (DOI)

はてなブックマーク (1 users, 1 posts)

収集済み URL リスト