- 著者
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桝田 正治
小西 国義
- 出版者
- THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.2, pp.419-424, 1993 (Released:2008-05-15)
- 参考文献数
- 9
- 被引用文献数
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ホウレンソウ種子は10~20°Cで良く発芽し, 25°C以上で著しく抑制された。25°Cで30%程度の発芽率を示す種子群を, 36N (濃硫酸) •30分間あるいは18N•60分間処理すると, 硫酸無処理の果皮除去種子と同様に80~95%の高い発芽率を示した。しかし,30°Cでは硫酸処理種子および果皮除去種子とも約50%の発芽率にとどまった。果皮を物理的に割っても発芽率は向上したが, その効果の程度は小さかった。硫酸処理後, 水ポテンシャル-1.3MPaのポリエチレングリコール溶液 (PEG-6000) に1週間 (10°C)プライミング処理した種子は, 供試6品種とも30°Cの高温下で置床後8日以内に80%以上が発芽した。プライミング処理のみでは, その効果は小さかった。果皮表面の走査電子顕微鏡観察によると, 硫酸処理によって果皮クチクラが崩壊し表皮に多数のくぼみが現れ, その底に径1~2μmの小孔が認められた。このことより, 硫酸処理による発芽促進は, とくに果皮クチクラの崩壊により胚への酸素透過性が高まったことによるものと推察された。