著者
村上 賢治 井戸 睦己 桝田 正治
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.284-289, 2006 (Released:2008-04-02)
参考文献数
14
被引用文献数
3 14

シシトウの閉鎖人工照明栽培における果実の辛味低減を目的とし, 暗期挿入および暗期低温の効果について検討した.通常の栽培では辛味を生じないシシトウ‘ししほまれ’を供試し, 植物体上部での光強度が15~350 μmolm-2s-1 になるように白色蛍光灯を用いて照明し, CO2濃度を800 ppmに制御した人工気象器内で栽培した. 明暗サイクルを連続照明および6時間暗期挿入, 暗期の温度を28, 20, 16℃とした. 明期の温度はいずれも28℃とした. 収穫果実の胎座組織からカプサイシンをメタノールで抽出し, 高速液体クロマトグラフにより測定した.食味試験の結果, 強い辛味が感じられなかった果実における胎座のカプサイシン濃度は, いずれも50 mg/100 gDW以下であった. 自然光・自然日長栽培株の果実は, 90%がその範囲内にあった.自然光+電照により24 時間日長とすると, 果実のカプサイシン濃度はやや上昇した. 人工気象器内で連続照明・28℃一定で栽培すると, カプサイシン濃度が著しく上昇し, 90%の果実が50 mg/100 gDW 以上であり, 60%の果実が500 mg/100 gDW 以上の高い値を示した. 6時間の暗期を挿入すると,カプサイシン濃度が減少し, 50 mg/100 gDW 以上の果実の割合が約60%, 500 mg/100 gDW の果実の割合が20% になった.さらに, 暗期の温度を16℃に下げると, カプサイシン濃度がさらに減少し, 50%以上の果実が50 mg/100 gDW 以下の値を示した. 果実当たり種子数とカプサイシン含量の関係を調べた結果, 両者には負の相関があり, 種子数が40個以上と多い果実はすべてカプサイシン含量が低かった. また, 温度が28℃一定の場合, カプサイシンの濃度が高く, 果実当たりの種子数が少なかった. これらのことから, 種子形成とカプサイシン生成との関係が示唆された.本研究の結果, 人工気象器内で連続光・28℃一定下でシシトウ果実に生じる強い辛味は, 暗期挿入と暗期低温で低減しうることが示された.
著者
桝田 正治 吉田 裕一 村上 賢治 浜田 優子 向阪 信一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.254-260, 2000-12-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
4 4

本研究は, 閉鎖系連続光下におけるピーマン'京みどり'の果実生産における炭酸ガス施与の効果について調査したものである.栽培環境条件は, 蛍光灯連続光の光強度150μmol m-2 s-1, 気温27±2℃, 湿度70±5%, 炭酸ガス濃度は自然 (340ppm), 800, 1200, 1600ppmとした.播種約45日後に第1番花が開花し, その時点から炭酸ガス施与を開始した.開始後72日間の収穫果数 (20~25gで収穫) はCO2自然区で個体当たり57果, 800~1600ppm制御区では80~90果となり, 自然区に比べて制御区で有意に増加した.CO2濃度の制御区間には有意差は認められなかった.地上部の全乾物重に占める果実乾物重の割合は, いずれの試験区でも40%以上を示した.生育は, すこぶる旺盛で節間は2~3cmと極めて短く葉色も濃緑であったが, 炭酸ガス施与開始2か月後には, 1200ppmと1600ppm区において軽微な葉脈間クロロシスが観察された.長期栽培でのCO2施与は, クロロシスが発生せず収量の向上が期待できる濃度800ppm程度が適当であると推察された.なお, 果実品質について自然光ガラス温室での同栽培法による6月の収穫果実と比較したところ, 連続光下の果実は乾物当たりのデンプン含有率は低いが, 糖含有率には差がなく, 果皮が硬く, 緑色濃く, つやの強い点が特徴的であった.
著者
今野 裕光 桝田 正治 村上 賢治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.227-234, 2012

トマトの防根給水ひも栽培において,栽培後に肥料袋を除去する「紐上置肥(以下,置肥)」を培地再利用が容易な砂に適用し,生育,収量および養分溶出率について土培地と比較した.また,両培地における混肥と置肥の施肥法の違いについても同様に調査した.供試材料には中玉トマトを用い,第7段摘心栽培とした.栽培期間は,2009年9月~2010年2月の136日間であった.草丈および摘心部の新鮮重・切断直径には,全処理区間で差がなかった.可販果収量は砂と土区間に差はなく,両培地における施肥法間にも差がなかった.砂区の果実は土区より全段位で酸度が低く,高段位でグリーンバック果の発生率が高かった.肥料を栽培後に培地から取り出し分析したところ,total-NおよびK<sub>2</sub>Oの溶出率は80%を超えており,砂区は土区より若干溶出率が低かった.砂区における施肥法間には,溶出率にほとんど差はなかった.一方,見かけの養分吸収量は,特にK<sub>2</sub>Oで少なく,砂区が土区より約4 g低い値を示した.これは元の培地の含有量に依存するものであり,砂区における果実酸度の低下とグリーンバック果の多発に関係していると考えられた.以上より,砂培地の肥料設計は,土培地よりもK<sub>2</sub>Oの肥効を高める必要があると考えられた.<br>
著者
畑 直樹 桝田 正治 小林 昭雄 村中 俊哉 岡澤 敦司 村上 賢治
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.93-100, 2011-09-01 (Released:2011-09-01)
参考文献数
63
被引用文献数
1 2

Altered growth habits and leaf injuries occurring under continuous light are comprehensively reviewed for Solanaceae and Cucurbitaceae crops. Continuous light can accelerate growth by providing a high daily light integral, but many species and cultivars develop leaf injuries and abnormal growth. Other environmental factors may alter responses to continuous light.
著者
桝田 正治 小西 国義
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.419-424, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

ホウレンソウ種子は10~20°Cで良く発芽し, 25°C以上で著しく抑制された。25°Cで30%程度の発芽率を示す種子群を, 36N (濃硫酸) •30分間あるいは18N•60分間処理すると, 硫酸無処理の果皮除去種子と同様に80~95%の高い発芽率を示した。しかし,30°Cでは硫酸処理種子および果皮除去種子とも約50%の発芽率にとどまった。果皮を物理的に割っても発芽率は向上したが, その効果の程度は小さかった。硫酸処理後, 水ポテンシャル-1.3MPaのポリエチレングリコール溶液 (PEG-6000) に1週間 (10°C)プライミング処理した種子は, 供試6品種とも30°Cの高温下で置床後8日以内に80%以上が発芽した。プライミング処理のみでは, その効果は小さかった。果皮表面の走査電子顕微鏡観察によると, 硫酸処理によって果皮クチクラが崩壊し表皮に多数のくぼみが現れ, その底に径1~2μmの小孔が認められた。このことより, 硫酸処理による発芽促進は, とくに果皮クチクラの崩壊により胚への酸素透過性が高まったことによるものと推察された。
著者
桝田 正治 瀧口 武 松原 幸子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.641-648, 1989
被引用文献数
12 12

水耕トマトの5段摘心栽培において摘心後に培養液濃度を高め養液成分の濃度変化および果実収量と品質について調査した. また苗齢の違いと養液成分の濃度変化の関連性についても検討した.<br>1. 定植から摘心までは園試1/2倍濃度で栽培したが, この間のEC値, 硝酸態窒素, カリ, リン濃度は常に低下し, カルシウムとマグネシウム濃度は比較的安定していた. 摘心後に培養液を同じ1/2倍濃度に更新するとカリとリンを除いてどの成分濃度も上昇傾向に変わり,EC値も常に上昇した. カリ濃度の変化は小さかったが,リン濃度の変化は大ぎく培養液補給時にゼロになることもしぼしぼあった. 園試標準濃度ではリンを除いてすべての成分濃度が上昇した. また園試3/2倍濃度と高くすると成分濃度の変化域はさらに大きくなった.<br>2. 異なる苗齢において園試1/2倍濃度の変化を調べたところ, 硝酸態窒素, カルシウムについては70日苗で低下し, 105日苗で安定し, 125日苗で上昇した, カリとリンの濃度はどの苗齢でも低下する傾向にあった. マグネシウム濃度は70日苗で安定していたが, 105日苗と125日苗では上昇した. 成分(n′)と水(w′)の吸収量から算出した値(n′/w′)は硝酸態窒素, カルシウムおよびマグネシウムで苗齢の小さいときには当初の培養液濃度より高く, 苗齢の大きいときは低くなった. リンとカリのn′/w′は苗齢に関係なくほぼ一定で培養液濃度より常に高かった.<br>3. 摘心後に培養液を園試3/2倍濃度(EC2.9)まで高めると, 1/2倍濃度および標準濃度に比べて果実のBrix および滴定酸度が高まった. この場合, 果実収量は若干低下したが, 裂果や尻ぐされ果の発生は少なくなった. 以上の結果より, 摘心後に培養液濃度を高めれば収量に大きな影響を及ぼす事なく果実の品質を高め得るものと推察された.
著者
桝田 正治 古市 朋子 武田 恭明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.93-98, 1998-01-15
被引用文献数
2 1

トマト固定品種'ファースト'の乾燥種子に総線量100, 200および400Gyのガンマー線(^<60>Co)を照射して突然変異の誘発を試みた.照射時間はいずれも5時間とした.1. 照射種子(M_1)はいずれも発芽するが, 線量が高くなるほど実生の生育が劣り400Gy区では子葉展開後に枯死した.100Gy区では照射種子の約80%, 200Gy区では38%の株でM_2種子が採種できた.M_1株の花粉稔性は照射区で劣り, 100Gy区より200Gy区で顕著であったが, 全不稔の花は存在しなかった.また, 花粉稔性と種子数の間には相関は見られなかった.2. M_2世代において, 100Gy区の188系統では3種類の突然変異が出現した.つまり, 葉幅の狭い系統, 10%以下の可稔花粉系統, オリジナルと同じ雄ずい型の雄性不稔系統である.200Gy区の88系統では9種類の突然変異が出現した.つまり, 葉緑素突然変異としてアルビノ, ビリデイス, キサンタおよび部分欠損の4系統, 10%以下の可稔花粉系統, オリジナルと同じ雄ずい型の雄性不稔系統, 葯が萎縮して褐色となり柱頭が突出する雄性不1稔系統, 葯は正常に発育するが, その葯の先端に柱頭が突出する雄性不稔系統および発芽不能系統であった.以上の結果より, トマト種子から突然変異を誘発する場合のガンマー線の好適照射線量は200Gy付近にあると考えられた.3. 葉緑素部分欠損形質は, ヘテロ自家受粉種子における分離比が正常 : 欠損=3 : 1に適合したことから, 1劣性遺伝子によって支配されているものと推察された.葉緑素欠損葉において生育中に線状や点状に緑色を発現する個体があり, その発現部分が拡大すると個体の生存は可能となった.