著者
曽根 一純 望月 龍也 野口 裕司
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1007-1014, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
7 7

国内外から導入した幅広い特性を有するイチゴ品種について, 促成および露地栽培におけるビタミンC含量を調査した.1995年には293品種を用いて5回の収穫時期で, また1996年には149品種を用いて7回の収穫時期で調査した.これをもとにビタミンC含量の品種・収穫時期間における変動を明らかにするとともに, ビタミンC含量と平均果重, 果皮色, 糖および有機酸の含量・組成等の果実品質関連形質との関係を検討した.1) 1995年作における収穫期間を通じた各品種のビタミンC含量の平均値は, 15.9mg/100g∿114.8mg/100gの範囲に分布し, 供試した293品種の総平均は59.1mg/100gであった.ビタミンC含量およびその時期的安定性には幅広い品種間差がみられた.Finlay・Wilkinson (1963)の方法による回帰係数を用いて環境変動に対する安定性を検討したところ, 高いビタミンC含量の品種ほど環境変動に敏感な傾向がみられた.しかし, '静紅', 'あかしゃのみつこ', 'さちのか'等は高いビタミンC含量を有し, かつ環境変動に対して比較的鈍感であり, 安定して高いビタミンC含量の品種を育成するための育種母本として有望と考えられた.2) ビタミンC含量の品種間差は収穫時期間の安定性が高く, 品種特性としてのビタミンC含量を評価するに当たっては, 大まかなスクリーニングのための調査を収穫期間中に数回行ない特性を把握し, より詳細な環境変動に対する調査が必要な場合には収穫期全体を通じた評価を行うことにより, 合理的な評価が可能と考えられた.3) ビタミンC含量と全糖含量および全糖含量に対するスクロースの割合(スクロース比率)との間には, 有意な正の相関がみられたが, 有機酸含量および有機酸含量に対するリンゴ酸の割合との間には有意な相関が認められなかった.また, ビタミンC含量の収穫期間を通じた変動係数は, スクロース比率およびグルコース/フルクトース比率の変動係数との間に正の相関を示した.従って, ビタミンC含量の安定して高い品種を育成するに当たっては, 糖含量が高く, かつ糖組成の安定性の高い素材の利用が可能であり, これらを用いることにより食味とのバランスが取れた安定して高いビタミンC含量を有する品種の育成が可能と考えられた.

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