著者
望月 龍也 石内 伝治 伊藤 喜三男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1000-1006, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

遺伝的に多様なトマト30品種・系統を供試し, 完熟果実におけるグルコースおよびフルクトース含量の作期および果房位による変動特性の差異を検討した.トマト品種・系統間における両成分含有量の相対的関係は, 栽培・環境条件の変動に対して比較的安定していた.また全体を通じてグルコース含量とフルクトース含量には高い正の相関がみられたが, 糖含量が高くなるほど全体に占めるフルクトース含量の比率は低くなる傾向がみられた.全品種・系統をこみにした作期・果房位ごとの平均値に対する, 対応する作期・果房位における糖含量の回帰分析から, 供試材料は, (1)作期・果房位ごとの糖含量が全供試材料の平均値とほぼ平等して変動する品種・系統, (2)作期・果房位間の変動が全供試材料の平均より大きい品種・系統, (3)作期・果房位間の変動が小さく安定した糖含量を示す品種・系統, (4)回帰直線への回帰が有意でなく糖含量変動が全供試材料の変動傾向と異なる変動を示す品種・系統が認められたが, 糖含量が高くかつ変動の小さい品種・系統は見出せなかった.
著者
曽根 一純 望月 龍也 野口 裕司
出版者
農業技術研究機構野菜茶業研究所
雑誌
野菜茶業研究所研究報告 (ISSN:13466984)
巻号頁・発行日
no.1, pp.241-254, 2002-03
被引用文献数
2

イチゴの日本品種84点と外国品種81点を用い,1995,1996年の2年間にわたり促成作型と露地作型で糖・有機酸の含量とそれらの組成を調査し,品種間並びに育成地および育成年代による差異について検討した。さらに,糖および有機酸の組成別含量間の相関関係およびそれらの遺伝力を明らかにした。1)供試した165品種の全糖含量(スクロース+フルクトース+グルコース)は21.5~96.6mg/gFWの範囲に分布し,平均含量は48.8mg/gFWであった。日本品種は外国品種に比べ有意に高かった。グルコース含量(Glu含量)の全糖含量に占める割合は17.7~41.5%の範囲に,フルクトース含量(Fru含量)の全糖含量に占める割合は23.1~57.4%の範囲に分布した。ともに,日本品種は外国品種に比べて有意に低く,また日本品種のうち1981年以降に育成された品種は,それ以前の品種よりも有意に低かった。一方,スクロース含量(Suc含量)の全糖含量に占める割合は7.7~58.8%の範囲に分布し,品種間差異が大きかった。日本品種のうち1981年以降に育成された品種は,それ以前に育成された品種と比較して有意に高かった。2)供試した165品種の全酸含量(クエン酸+リンゴ酸)は5.3~18.7mg/gFWの範囲に分布し,平均含量は10.7mg/gFWであった。リンゴ酸含量が全酸含量に占める割合(Mal比率)は4.8~45.8%と品種間差異が大きく,平均値は20.0%であった。 全酸含量の平均値は日本品種が外国品種と比べ有意に低く,Mal比率には日本品種および外国品種の間に大きな差異はなかった。 3)糖・有機酸の含量・組成について主成分分析を行った結果,第1主成分はSuc含量,第2主成分ではGlu+Fru含量,第3主成分はMal比率を表すと考えられ,第3主成分までの累積寄与率は97.7%であった。また,第1・第2主成分のスコア散布図では,日本品種と外国品種との間で分布域に明確な違いがみられ,日本品種は第1主成分について外国品種より正の側に多くが分布した。さらに日本品種では,1981年以降に育成された品種はそれ以前に育成された品種と比較して,より第2主成分の正側に分布した。このことは,日本品種は外国品種に比べて,全糖含量およびSuc含量の高い品種が多く,また近年ではSuc比率を高める方向に育種が進んできたことを示すものと考えられる。4)糖および有機酸の組成比率は,いずれも高い広義の遺伝力を示したことから,比較的改良しやすい形質であると考えられた。これらの形質の改良に当たっては,育種初期段階で選抜圧を加えることにより,効率的な選抜が可能であると考えられた。
著者
曽根 一純 望月 龍也 野口 裕司
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1007-1014, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
7 7

国内外から導入した幅広い特性を有するイチゴ品種について, 促成および露地栽培におけるビタミンC含量を調査した.1995年には293品種を用いて5回の収穫時期で, また1996年には149品種を用いて7回の収穫時期で調査した.これをもとにビタミンC含量の品種・収穫時期間における変動を明らかにするとともに, ビタミンC含量と平均果重, 果皮色, 糖および有機酸の含量・組成等の果実品質関連形質との関係を検討した.1) 1995年作における収穫期間を通じた各品種のビタミンC含量の平均値は, 15.9mg/100g∿114.8mg/100gの範囲に分布し, 供試した293品種の総平均は59.1mg/100gであった.ビタミンC含量およびその時期的安定性には幅広い品種間差がみられた.Finlay・Wilkinson (1963)の方法による回帰係数を用いて環境変動に対する安定性を検討したところ, 高いビタミンC含量の品種ほど環境変動に敏感な傾向がみられた.しかし, '静紅', 'あかしゃのみつこ', 'さちのか'等は高いビタミンC含量を有し, かつ環境変動に対して比較的鈍感であり, 安定して高いビタミンC含量の品種を育成するための育種母本として有望と考えられた.2) ビタミンC含量の品種間差は収穫時期間の安定性が高く, 品種特性としてのビタミンC含量を評価するに当たっては, 大まかなスクリーニングのための調査を収穫期間中に数回行ない特性を把握し, より詳細な環境変動に対する調査が必要な場合には収穫期全体を通じた評価を行うことにより, 合理的な評価が可能と考えられた.3) ビタミンC含量と全糖含量および全糖含量に対するスクロースの割合(スクロース比率)との間には, 有意な正の相関がみられたが, 有機酸含量および有機酸含量に対するリンゴ酸の割合との間には有意な相関が認められなかった.また, ビタミンC含量の収穫期間を通じた変動係数は, スクロース比率およびグルコース/フルクトース比率の変動係数との間に正の相関を示した.従って, ビタミンC含量の安定して高い品種を育成するに当たっては, 糖含量が高く, かつ糖組成の安定性の高い素材の利用が可能であり, これらを用いることにより食味とのバランスが取れた安定して高いビタミンC含量を有する品種の育成が可能と考えられた.
著者
曽根 一純 望月 龍也 野口 裕司
出版者
農業技術研究機構野菜茶業研究所
雑誌
野菜茶業研究所研究報告 (ISSN:13466984)
巻号頁・発行日
no.1, pp.241-254, 2002-03
被引用文献数
2

イチゴの日本品種84点と外国品種81点を用い,1995,1996年の2年間にわたり促成作型と露地作型で糖・有機酸の含量とそれらの組成を調査し,品種間並びに育成地および育成年代による差異について検討した。さらに,糖および有機酸の組成別含量間の相関関係およびそれらの遺伝力を明らかにした。1)供試した165品種の全糖含量(スクロース+フルクトース+グルコース)は21.5~96.6mg/gFWの範囲に分布し,平均含量は48.8mg/gFWであった。日本品種は外国品種に比べ有意に高かった。グルコース含量(Glu含量)の全糖含量に占める割合は17.7~41.5%の範囲に,フルクトース含量(Fru含量)の全糖含量に占める割合は23.1~57.4%の範囲に分布した。ともに,日本品種は外国品種に比べて有意に低く,また日本品種のうち1981年以降に育成された品種は,それ以前の品種よりも有意に低かった。一方,スクロース含量(Suc含量)の全糖含量に占める割合は7.7~58.8%の範囲に分布し,品種間差異が大きかった。日本品種のうち1981年以降に育成された品種は,それ以前に育成された品種と比較して有意に高かった。2)供試した165品種の全酸含量(クエン酸+リンゴ酸)は5.3~18.7mg/gFWの範囲に分布し,平均含量は10.7mg/gFWであった。リンゴ酸含量が全酸含量に占める割合(Mal比率)は4.8~45.8%と品種間差異が大きく,平均値は20.0%であった。 全酸含量の平均値は日本品種が外国品種と比べ有意に低く,Mal比率には日本品種および外国品種の間に大きな差異はなかった。 3)糖・有機酸の含量・組成について主成分分析を行った結果,第1主成分はSuc含量,第2主成分ではGlu+Fru含量,第3主成分はMal比率を表すと考えられ,第3主成分までの累積寄与率は97.7%であった。また,第1・第2主成分のスコア散布図では,日本品種と外国品種との間で分布域に明確な違いがみられ,日本品種は第1主成分について外国品種より正の側に多くが分布した。さらに日本品種では,1981年以降に育成された品種はそれ以前に育成された品種と比較して,より第2主成分の正側に分布した。このことは,日本品種は外国品種に比べて,全糖含量およびSuc含量の高い品種が多く,また近年ではSuc比率を高める方向に育種が進んできたことを示すものと考えられる。4)糖および有機酸の組成比率は,いずれも高い広義の遺伝力を示したことから,比較的改良しやすい形質であると考えられた。これらの形質の改良に当たっては,育種初期段階で選抜圧を加えることにより,効率的な選抜が可能であると考えられた。