- 著者
-
寺師 浩人
前重 伯壮
野村 正
宇佐美 眞
- 出版者
- 日本静脈経腸栄養学会
- 雑誌
- 静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.4, pp.939-943, 2013 (Released:2013-08-23)
- 参考文献数
- 30
脂質は皮膚を構成する重要成分であり、細胞膜の正常機能維持や免疫に寄与する。従って、創傷治癒機転を把握するためには、脂質の主成分である脂肪酸を理解することが重要である。そのためには、皮膚における脂肪酸代謝、表皮角化細胞や線維芽細胞の脂肪酸組成、さらに脂肪酸と創傷治癒との関係を多角的にみなければならない。脂肪酸は食事 (もしくは内服) と外用から体内に吸収されるわけであるが、正常に吸収・代謝されなければ、迅速な創傷治癒機転が働くことが困難となり、正常皮膚の機能維持も図ることができない。時宜を得た脂肪酸の代謝がなければ正常創傷治癒機転が機能しなくなり、結果として創傷治癒遅延のみならず瘢痕形成にも繋がりかねない。本項では、正常皮膚の脂肪酸組成、創傷治癒過程における脂肪酸代謝、瘢痕における脂肪酸組成、さらには脂肪酸によるケロイド制御の展望について述べる。