著者
宮澤 陽夫
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11-12, pp.1377-1382,1445, 2000-11-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1

本総説は2000年度日本油化学会賞の受賞論文による。脂質分子の過酸化は, 食品の栄養価を損なうだけでなく, 多くの生化学反応に関与し, 細胞老化や疾病にも関わる。食品や生体の機能性脂質の酸化損傷を評価するには, 過酸化反応の第一次生成物であるヒドロペルオキシドの検出が欠かせない。これは, 食品の健全性やヒトの健康増進に関する研究を企画する場合の重要な解析技術でもある。1987年に筆者らは, 脂質ヒドロペルオキシドを選択的で高感度に定量する目的で, 化学発光検出-高速液体クロマトグラフ法を開発した。これにより, 食品やヒト血漿の過酸化脂質を脂質クラスごとに分析できるようになった。本法を用いて, 食品油脂の初期酸化ではトリアシルグリセロールのモノヒドロペルオキシドとともにビスヒドロペルオキシドが生成することを確認した。動物では不飽和度の高い魚油などを長期摂取すると, 組織の膜リン脂質が過酸化を受けやすくなり, 抗酸化のためα-トコフェロールの要求量の増えることが明らかにされた。細胞に過酸化脂質が増える第一の原因は, 動物個体自体の加齢・老化であることがわかった。膜脂質の過酸化は, 動脈硬化, 糖尿病, 痴呆症など老化性障害と密接に関わることを明らかにした。

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