著者
坂爪 聡子
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.43-55, 2006-05-31 (Released:2017-09-12)

本稿の目的は,出産が女性の就業に与える影響を明示的に取り入れたモデルを用いて,少子化の進行要因を明らかにすることにある。従来の理論研究では,出産により就業状態や就業条件が変化することは考慮されていない。それに対して,本稿では,子供をもつ場合ともたない場合,あるいは子供数による女性の就業における違い-生涯所得格差や賃金格差-をモデルに取り入れている。なぜなら,日本では出産を機に退職する女性は依然多く,たとえ再就職してもその条件は悪いため,出産が生涯所得や賃金に与える影響はきわめて大きいからである。少子化の分析において,これらの影響を考慮することは不可欠である。本稿のモデルは,基本的にはベッカーなどに従うものの,上述の設定により子供のコストが従来のモデルとは異なる。このことは,予算制約の形に影響を与え,本稿のモデルでは子供をもたない選択をするケースが導出される。さらに,このケースが成立する可能性は,出産による損失所得や賃金低下の程度が大きくなるほど,高くなる。

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